基本合意書 平成20年12月14日  特定血液凝固第IX因子製剤である「PPSB−二チヤク」(以下、「本件血液製剤」という。)にC型肝炎ウイルスが混入し、その投与を受けた方々がC型肝炎ウイルスに感染するという薬害事件(以下、「本薬害事件」という。)が起き、感染被害者及びその遺族の方々は、長期にわたり、肉体的、精神的苦痛を強いられている。  いわゆる薬害肝炎全国原告団・同全国弁護団(以下、「原告団・弁護団」という。)と日本製薬株式会社(以下、「日本製薬」という。)は、東京地方裁判所及び名古屋地方裁判所において一定の範囲で日本製薬の法的責任を認める一審判決がなされたこと、また、同訴訟の原告(一審原告を含む。以下同じ。)ら及びこれと同種の後続訴訟事件の原告らが、「特定フィプリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法」(以下、「特別措置法」という。)に基づく給付金(以下、「給付金」という。)の支給を受けることを踏まえ、同訴訟事件及びこれと同種の後続訴訟事件に係る紛争を解決するため、次のとおり基本事項を合意した。 1 責任と謝罪及び再発防止  日本製薬は、本薬害事件について、本件血液製剤によりC型肝炎ウイルス感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、感染被害者及びその遺族の方々に対し、心からおわびする。  また、日本製薬は、今回の事件の反省と以下の事実を踏まえ、命の尊さを再認識し、製薬会社として薬害の再発防止のために最善かつ最大の努力を行うことを誓う。 (1)獲得性の傷病につき、本件血液製剤の投与を受け、C型肝炎ウイルスの感染が発生したこと。 (2)C型肝炎ウイルスに感染された方々及びその家族の方々が、感染、発病、治療等により、長期にわたり肉体的・精神的苦痛を被ったこと。 (3)本件血液製剤によるC型肝炎ウイルス感染被害拡大防止のため、その時々の科学技術水準を踏まえて、製薬会社として更なる措置を講じることが可能であったと考えられること。 (4)本件血液製剤の不適切な使用を防止するための情報伝達につき、添付文書の記載が不十分であったこと。 2 恒久対策等 (1)被害実態調査 ア 本件血液製剤の投与を受けた者の確認の促進等  日本製薬は、国(厚生労働省)及び医療機関による本件血液製剤の投与を受けた者の確認の促進、被投与者への検査の呼びかけに協力することを約する。 イ データの開示 @ 日本製薬は、その保管する本件血液製剤の納入実績データを次の場合に開示する。 (ア)納入医療機関から開示の要求があったとき (イ)原告弁護団から民事訴訟法による調査嘱託・当事者照会(提訴前の当事者照会を含む)、弁護士法23条の2による照会などの法的手続により開示の請求のあったとき A 日本製薬が、本件血液製剤に関して収集した感染症(副作用)報告等のデータを次の場合に必要な範囲で開示する。 (ア)個人情報保護法による開示請求があったとき (イ)民事訴訟法による当事者照会(提訴前の照会を含む)があったとき (ウ)弁護士法23条の2による照会があったとき (エ)上記報告データと一致する患者本人(遺族を含む)又は弁護士である代理人から開示請求があったとき (2) 新薬の開発など  日本製薬は、原告らC型肝炎ウイルスの感染被害者の健康回復のため新薬の開発などに努める。 (3) 検証会議への協力  日本製薬は、国(厚生労働省)が設置する本件事件の検証及び再発防止のための「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」に対して、社内に現存する本件薬害に関する資料(ただし、患者のプライバシーに関わる情報および日本製薬の企業秘密に関わる情報をのぞく)を提供する等して協力する。 (4) 継続協議  上記(1)ないし(3)に規定されたことなどを含めた再発防止について、原告団・弁護団が協議事項を明示して、原告団・弁護団との協議の開催を求めた場合には、日本製薬は、その協議に応じる。  また、原告団・弁護団が国との間で行う協議において、国および原告団・弁護団の双方が協議事項を明示して日本製薬の出席を求めた場合には、必要に応じてその協議に出席する。 平成20年12月14日 薬害肝炎全国原告団代表 薬害肝炎全国弁護団代表 日本製薬株式会社 代表取締役