基本合意書  フィブリノゲン製剤及び血液凝固第\因子製剤(コーナイン,クリスマシン)(以下,併せて「本件各血液製剤」という。)にC型肝炎ウイルスが混入し,多くの方々が感染するという薬害事件(以下,「本薬害事件」という。)が起き,感染被害者及びその遺族の方々は,長期にわたり,肉体的,精神的苦痛を強いられている。  薬害肝炎全国原告団・弁護団(以下「全国原告団・弁護団」という。)と田辺三菱製薬株式会社及び株式会社ベネシス(以下,両社を併せて,「田辺三菱製薬ら」という。)は,いわゆる「薬害肝炎訴訟事件」につき,各地裁において一定範囲で田辺三菱製薬らの法的責任を認める一審判決がなされたこと,また本日現在,各高等裁判所・地方裁判所に係属している損害賠償請求訴訟事件の原告(一審原告を含む。以下同じ。)ら及びこれと同種の後続訴訟事件の原告らが,「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第\因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法」(以下「特別措置法」という。)に基づく給付金(以下「給付金」という。)の支給を受けることとなったことを踏まえ,上記訴訟事件及びこれと同種の後続訴訟事件に係る紛争を解決することとし,次のとおり基本事項を合意した。 1 責任と謝罪,及び再発の防止  田辺三菱製薬らは,本薬害事件について,本件各血液製剤によるC型肝炎ウイルス感染被害者の方々に甚大な被害が生じ,その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め,感染被害者及びその遺族の方々に深くお詫びする。  田辺三菱製薬らは,さらに,今回の事件の反省と以下の事実を踏まえ,命の尊さを再認識し,製薬会社として薬害ないし医薬品による健康被害の再発防止に最善かつ最大の努力を行うことを誓う。 (1) 獲得性の傷病について,本件各血液製剤の投与を受けたことにより,C型肝炎に感染された方々が多数生じたこと。 (2) C型肝炎に感染された方々及びその家族の方々が,感染,発病,治療等により,長期にわたり肉体的・精神的苦痛を被ったこと。 (3) 本件各血液製剤によるC型肝炎感染被害拡大防止のため,その時々の科学技術水準を踏まえて,製薬会社として更なる措置を講じることが可能であったと考えられること。 (4) 青森県における集団感染発生から数えても現在までに20年以上が経過し,その間に,多くの納入医療機関において投与の事実を立証しうるカルテなどの医療記録が廃棄された実態が存すること。 (5) いわゆる418人リストの感染被害者情報については,田辺三菱製薬らはその情報を厚生省に報告した。一方,感染被害者に対しては,2007年まで,いわゆる7004医療機関の公表とそれに伴う検査の呼びかけ以外の対応がなされず,リスト掲載者のなかには,感染の事実を知らないまま病状を進行させた者も存すること。 2 恒久対策等 (1) 被害実態調査  田辺三菱製薬らは,第1項(1)ないし(5)の事実を踏まえ,本件薬害についての実態調査に関し,ア,イに規定する事項を実施する。 ア 本件各血液製剤の投与を受けた者の確認の促進等  田辺三菱製薬らは,国(厚生労働省)及び医療機関による本件各血液製剤の投与を受けた者の確認の促進,被投与者への検査の呼びかけに協力する。 イ データの開示 @ 田辺三菱製薬らは,その保管する本件各血液製剤の納入実績データを次の場合に開示する。 (ア) 納入医療機関から開示の要求があったとき (イ) 民事訴訟法による調査嘱託・当事者照会(提訴前の当事者照会を含む),弁護士法23条の2による照会などの法的手続により開示の請求があったとき A 田辺三菱製薬らが,本件各血液製剤に関して収集した感染症(副作用)報告等のデータを次の場合に必要な範囲で開示する。 (ア) 個人情報保護法による開示請求があったとき (イ) 民事訴訟法による当事者照会(提訴前の照会を含む)があったとき (ウ) 弁護士法23条の2による照会があったとき (エ) 上記報告データと一致する患者本人(遺族を含む)又は弁護士である代理人から開示請求があったとき (2) 新薬の開発  田辺三菱製薬らは,C型肝炎ウイルスの感染被害者の治療のための新薬の開発に努める。 (3) 検証会議への協力  田辺三菱製薬らは,国(厚生労働省)が設置する本件事件の検証及び再発防止のための「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」に対して,社内に現存する資料(ただし,個人のプライバシー,企業機密に関する情報を除く。)を提供する等して協力する。 (4) 継続協議  上記(1)に規定されたことなどを含めた被害実態調査,上記(2)に規定された新薬の開発,並びに上記(3)に規定されたことなどを含めた協力について,田辺三菱製薬らは,全国原告団・弁護団と継続協議をする場を設定する。  また,国と全国原告団・弁護団が国との間で行う協議において,上記(1)又は(3)に関連した事項が協議され,国及び全国原告団・弁護団が協議事項を明示して田辺三菱製薬らの出席を求めた場合は,その協議に出席する。ただし,田辺三菱製薬らは必要性がない場合若しくは合理的な理由があれば参加しないことができる。 平成20年9月28日 薬害肝炎全国原告団代表 薬害肝炎全国弁護団代表 田辺三菱製薬株式会社 代表取締役 株式会社ベネシス 代表取締役