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国の和解勧告拒否の決定を受けての声明

2011年1月28日

薬害イレッサ訴訟統一原告・弁護団

 1月28日、菅直人総理大臣は、薬害イレッサ訴訟に関し、同月7日に東京大阪両地方裁判所から出された和解勧告を拒絶するとの決定をしました。
 しかし、この結論は、裁判所の所見を理解しない上で出されたものと言わざるを得ません。
 国の和解拒絶という判断に対する薬害イレッサ統一原告団・弁護団の声明を発表しました。

声明

 本日、国は薬害イレッサ訴訟について、大阪地方裁判所及び東京地方裁判所における和解協議自体を拒絶することを表明した。

 両裁判所の和解勧告所見は、イレッサについて、承認前から「副作用の少ない安全な抗がん剤」という認識が医療現場に広がっていたことを前提に、承認前に致死的な間質性肺炎の発症を示す危険情報が蓄積されていたにもかかわらず、添付文書等における十分な注意喚起がなされなかったことをもって、国とアストラゼネカ社の責任を指摘した。この所見は、がん患者の知る権利と医薬品の安全性確保の重要性を説いたものに他ならない。従って、和解勧告を拒否することは、がん患者の権利と医薬品の安全性確保の重要性を否定することに等しい。

 菅直人総理大臣は、「副作用の問題をどのように考えるのかがひとつの主眼だが、がん治療の進展とがん患者全体の利益を考えなければならない。」として、薬害イレッサ被害者の救済とがん患者全体の利益が対立するかのように述べた。しかし、このようなとらえ方にこそ根本的な誤りがある。がん医療の進展と患者の権利の保障・医薬品の安全性確保は表裏一体のものであり、薬害イレッサ事件を早期に全面解決することこそが、がん患者全体の利益につながるのである。

 国は、和解勧告の受け入れを拒否する一方で、抗がん剤による副作用被害者の救済制度の創設に言及した。救済制度の創設は、原告らがかねてから求めてきたことであり、全面解決要求の重要な柱である。しかし、承認から3か月後の緊急安全性情報発令までだけでも162名にのぼる副作用死亡者を出した薬害イレッサの責任をあいまいにしたままで、事態の収束をはかろうする政府の態度は、がん患者は情報提供を受けられなくとも、被害に遭った場合には金銭で補償するからよしとせよと言っていることに等しく、到底受け入れられるものではない。国の真摯な反省無くして、悲惨な薬害の再発を防止することはできない。

 原告らは、国に対し、真摯な反省のもとに、早期全面解決を図ることを強く求める。

 原告らは、今後も、薬害イレッサの早期全面解決を実現するために全力を尽くす所存である。引き続きご理解とご支援をお願いする。

以上

1月28日付 原告団・弁護団声明 (印刷用 pdf)

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