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2010年11月10日

 厚生労働大臣 細川 律夫 殿

日本科学者会議
保健医療福祉問題研究委員会
 委員長 牧野 忠康

連絡先
 〒113-0034
 東京都文京区湯島1-9-15 茶州ビル9階
 電話 03-3812-1472  FAX 03-3813-2363

イレッサの再審査に関する意見書

 イレッサが輸入承認されてから8年を経過し、再審査を受けています。イレッサは、発売直後から間質性肺炎による多数の副作用被害を起こし、2010年3月末までに810名の方が命を落としました。

 承認審査とその後の行政対応が問われています。私たちは、日本のがん患者が安心できる治療をうけられるよう、イレッサの再審査にあたり下記のことを要望します。

  1. 承認条件を満たしているか十分な検討を
  2. 有効な適応制限をもうけること
  3. 審査過程の情報を早期公開すること
  4. 研究者の利益相反を記載すること

要望の理由説明

1. 承認条件を満たしているか十分な検討を

 イレッサは臨床第2相で承認され、「手術不能又は再発非小細胞肺癌に対する本薬の有効性及び安全性の更なる明確化を目的とした十分なサンプルサイズを持つ無作為化比較試験を国内で実施すること」という承認条件がつけられました。
 2003年から2006年に日本でおこなわれたV15-32試験では、生存期間に関して、対照とした標準治療薬ドセタキセルに対する非劣性を証明できていません。

 その後、アストラゼネカ社が実施した臨床試験は、代理エンドポイント「無増悪生存期間」を比較する試験や、対象をEGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子に変異がある患者に限定したものになっています。

 抗がん剤において延命効果の評価が重要であることは、2005年11月1日に厚生労働省が出した「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」で、原則として「患者数が多い癌腫では、延命効果を中心に評価する第3相試験を必須」としていることからも明らかです。

 現在に至るまで、イレッサの延命効果を立証するデータは出されていません。承認条件を満たさないまま、明確な使用規制もなく使われていることは問題です。イレッサが生存期間を延ばす薬であるかを確認出来るまで、限定的な使用が必要です。
 きちんとした審査を要望します。

2. 有効な適応制限をもうけること

 イレッサは「手術不能又は再発非小細胞肺癌」という、制限の緩い適応で承認されました。イレッサと同じEGFRチロシンキナーゼ阻害剤作用をもつ肺がん治療薬タルセバは、「切除不能な再発・進行性で、がん化学療法施行後に増悪した非小細胞肺癌」と第二次選択であることを明示した適応で、2007年10月に承認されています。
 また、タルセバには「製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること。」という承認条件がつきました。

 これは、イレッサでの間質性肺炎多発の教訓を受けて決まった規制です。しかし、イレッサには同様の規制をおこなっていません。
 そのため、臨床試験で延命効果が証明されているタルセバが、使用医師の登録と全例調査、適応制限もあって使いにくいと判断され、臨床現場で敬遠される状況があります。有効性と安全性のバランスから見て、逆転した規制結果になっています。

 アメリカは、承認後におこなわれた大規模臨床試験(ISEL試験)において、イレッサが延命効果を確認できなかったため、2005年6月、新規使用を原則として禁止しました。一方、EUでは2度目の承認申請を審査し、2009年7月、EGFR遺伝子変異がある患者に限ってイレッサ使用を承認しました。
 薬事行政は、日米欧医薬品規制調和国際会議( International Conference on Harmonisation (ICH) )で規制レベルをそろえてきました。日本でのイレッサの規制は、欧米の規制当局がとった処置と比較すると不合理さが目立ちます。

 イレッサは一部で効くとされる患者がいる一方、急速に進行する間質性肺炎で死亡する患者が少なくありません。患者制限をしない使い方は危険です。現在までの臨床試験結果とEU・アメリカの規制当局の対応結果からみて、イレッサは厳格な制限のもとで使用する薬と考えます。

 少なくとも、以下の規制を義務づける必要があります。
 1) 有効性が示唆されるEGFR遺伝子変異がある患者に適応を制限する
 2) イレッサを使用できる医師をがん化学療法の専門医に限定する
 3) 使用した全症例について有効性・安全性の報告を義務づける

 再審査結果に基づく適切な適応制限と厚生労働省による使用基準の作成を要望します。

3. 審査過程の情報を早期公開すること

 添付文書の改訂だけでは、イレッサの危険性をどのように回避すべきか臨床現場に伝わりません。簡単な審査結果だけでなく、企業が提出した資料の全容と審議内容を早い時期に公開するよう、要望します。
 新医薬品再審査概要(SBR)は、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構のサイトに公開されているものは、最近3年間で22成分と少なく、その内容も貧弱です。

 新薬承認時の判断が十分であったかが問われているイレッサについては、新医薬品審査報告書を出し直すぐらいの審議内容があるはずです。また、公表されている新医薬品再審査結果は、最近でこそ1年程度で公開されていますが、時間がかかります。医療現場で適正使用が可能なように、迅速な対応が必要と考えます。

4. 研究者の利益相反を記載すること

 イレッサの開発に役割を果たした専門医は、輸入・販売元のアストラゼネカ社から研究資金をもらっていたことが明らかになっています。日本肺癌学会が作成した「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」作成委員もアストラゼネカ社からの独立性が疑われています。
 審査に用いる論文、試験報告の著者・監修者に関して、企業と利益相反の関係状況を明記した報告を出すよう要望します。
以上

参考資料

イレッサとタルセバの規制比較 (2010/09/11)
薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会議事録 (タルセバ部分 抄) (2007/07/25)

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