民医連新聞 2009年8月3日 ■ ずさんな薬事行政を告発  薬害イレッサ三多摩シンポ  被害に学び、薬害をなくすために―。「薬害イレッサ三多摩シンポジウム」が6月13日、東京都内で開かれました。  肺ガン治療薬イレッサ。「副作用の少ない夢の新薬」と大々的に宣伝され、2002年に世界に先駆けて日本で承認されました。しかし、死亡を含む重篤の副作用があり、公表されているだけで787人の命が奪われています。  現在、東京と大阪で13人の原告が、イレッサを販売したアストラゼネカ社と、イレッサを承認した日本政府を相手に、損害賠償訴訟を起こしています。  薬害イレッサ東日本訴訟弁護団の小池純一弁護士が、「裁判の到達と展望」について報告。「訴訟のなかで、イレッサには日本人への有用性が認められないこと、ずさんな承認と安全対策の怠慢が薬害の発生の要因になったことが明らかになった」と語りました。  パネルディスカッションでは、別府宏圀さん(医師・薬害オンブズパースン会議副代表)、増山ゆかりさん(サリドマイド福祉センター常務理事)、鳥集(とりだまり)徹さん(ジャーナリスト)、中村建さん(東京民医連薬剤師委員会委員長)が発言しました。  イレッサ承認当時、病院の薬局長だった中村さんは、「インターネットなどで宣伝され、患者さんから『早く採用して』と求められる状態だった」「添付文書での警告は目立たず、現場が深刻に受け止めるような書き方ではなかった。副作用情報を隠したメーカーの責任は重大だ」と告発。そのうえで、「新薬を採用する場合に、どのように情報を得て判断するか。メーカーの情報に頼っていないか。医療に問われる課題だと思う」と語りました。  サリドマイド被害者の増山さんは、「とくに新薬については、安全が保障されていないものが販売されている」と指摘しました。  父親を亡くした原告の女性は、一人で子育てしており、父は唯一の支援者だった。その父を亡くし、薬害を多くの人に知ってもらいたいと思って裁判に参加した」と語りました。 写真 ジャーナリストの鳥集さんは、「かつて医師の言葉通りにイレッサ肯定の記事を書いた。痛恨の経験を生かしたい」と語った