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「東葛の健康」連載コラム 2003年2月〜6月
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| No. | 月 | 表題 | 執筆者 |
|---|---|---|---|
| 51 | 5月 | 降圧剤、舌下投与は危険? | 中村 建 |
| 50 | 4月 | C型肝炎の新しい治療薬(リバビリン) | 山口 麻満子 |
| 49 | 3月 | 花粉症と治療薬 | 瓶子 めぐみ |
| 48 | 2月 | 医薬品審査に厚労省以外の団体が? | 藤井 恵利 |
クスリあれこれ No.51 2003年5月
中村 建
当院(東葛病院)でも採用している、降圧剤(血圧降下剤)のニフェジピン(当院ニフェラー卜)カプセルという薬剤は、「緊急時に血圧を下げるお薬」として長い間使われてきました。使い方は「舌下投与」といい、カプセル剤をかみくだいて舌の下に入れるという方法でした。
ところが、つい最近添付文書が改訂され、緊急時の「舌下投与」は安全性に問題があるで「このような使い方はしないように」と変更されました。その背景を紹介します。
高血圧の緊急症という病気は、様々な原因によって起こります。血圧を本当に緊急に下げないと大動脈が破裂してしまう危険な病気(本当の高血圧緊急症)と、単に血圧だけが非常に高くなっている状態では病気の質は全く違います。日本では、血圧が高いというだけで「ニフェジピンカプセル舌下投与」という治療が広く行われてきました。
ところが、ニフェジピンカプセルは効果持続時間が非常に短いため、例えば220という高血圧の患者さんに投与するとすぐに血圧は下がりますが、「脈が非常に早くなる」「血圧が下がりすぎる」「脳卒中(急に血圧が下がりすぎて脳に血液が回らない)」等と言う副作用が出現し、報告されているだけでも2人の方が死亡されています(後遺症1例)。
欧米では10年近く前より高血圧緊急症には「注射剤」投与が原則で、効果が不安定な内服薬の投与は行われていませんでした。日本と違って血圧の薬を使わなければならない患者さんが多く、早くから問題となるお国柄であったとは言えます。日本ではやっと添付文書が見直されたという状況です。
医療を安全に、安心して受けたいのは誰もが願っていることですが、非常に多数の治療が行われた中にも、「見直すべき」事が潜んでいるのだと思います。当院ではこの問題でニュースを作成し、問題点を投げかけると共に、代替薬剤(カプトプリルなど)を紹介し、医療安全に努めています。
クスリあれこれ No.50 2003年4月
山口 麻満子
ここ最近テレビなどでC型肝炎という言葉をよく耳にすると思います。今回は、C型肝炎の治療薬についてお話しです。
C型肝炎ウイルスによる血液を介しての感染が主で、昔は輸血や予防接種等による感染が多かったのですが、現在は新規感染者が減少してきているようです。自覚症状はあまりなく、本人も気付かないことが多いのですが、放置しておくと、十数年で肝硬変や肝癌にまで進行する可能性が高くなります。
数年前までは治療薬がなかったのですが、現在ではウイルスの排除と病気の進行を遅らせることを目的にインターフェロン療法が行われています。さらに、リバビリン(レベトール)が2年前から保険適用となり、インターフェロンの効きにくい患者さん(ウイルス量が多く、ウイルス遺伝子Ib型の人)に対して、インターフェロンと併用することにより、以前より高い効果が得られるようになりました。
しかし、副作用の発現率が高く、発熱・食欲不振・発疹・うつ症状・間質性肺炎・白血球減少などの様々な副作用が現れます。副作用が重い時にはいったん治療を中断することもあります。投与期間は初期2〜4週間の入院のもと毎日投与され、その後外来で週3回投与を合計6カ月間行います。
現在これらの治療はウイルスを消滅・させる目的だけでなく、ウイルスを減らし肝機能を改善させるものです。その結果肝硬変や肝癌への進行が抑えられ患者さんの予後が改善されてきています。(肝癌の発生率を著効例では80%減らすことが出来ます)とはいえまだまだ効果が限定的な面もあるため、今後さらに良い治療法の開発が期待されています。
クスリあれこれ No.49 2003年3月
瓶子 めぐみ
いよいよ花籾症の季節が到来しました。近所や職場、あるいは家族のなかに、花粉症の人がいませんか?「花粉症」が話題に上り始めるのは、おおむね1月中旬ごろからでしょうか。
テレビや新聞、あるいは周囲の人たちに「そろそろ花粉が飛びはじめるらしいよ」「今年はひどいのかしら?」といった会話が巷を飛び交います。
では花粉症の人はどれくらいの数がいるのでしょうか。日本では約1,300万人といわれています。つまり国民の10人に1人が花粉症に悩まされていることになり、まさに「国民病」といっていいほどなのです。
ひどいくしやみや鼻水、鼻づまり、そして目の充血やかゆみ、これらが花粉症の主な症状です。
花粉症はアレルギー疾患のひとつです。アレルギーというのは、自分のからだの成分とは異なる物質が体内に侵入してきたときにその異物を排除しようと抵抗する反応が過敏状態のことです。
体内に入ってきた「花粉」という異物に村し、鼻水や涙、くしゃみによって排除しようとするのがアレルギー反応です。
花粉症を治す特効薬は残念ながらありません。しかしつらい症状を軽減することはできます。
薬物療法としては、主に抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬の3種類があります。抗アレルギー薬は、花粉飛散の2週間ほど前から使い始めて、症状が重症になるのを防ぐ予防的働きがあります。
抗ヒスタミン薬はくしゃみや鼻水など症状が出てから使っても効果があります。
鼻に噴霧する局所ステロイド薬はくしゃみ、鼻水に効果があるとともに鼻づまりに強力な効果があります。目に症状がある方は点眼薬も併用します。
このような薬物療法とともに、普段のライフサイクルを見直すことも重要です。症状のひどい人は花粉症用のマスクとメガネを使ってください。
また帰宅したら玄関の外で花粉を落とし、室内に持ち込まないことも大切です。
クスリあれこれ No.48 2003年2月
藤井 恵利
去る2002年12月13日、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法が参院本会議で可決されました。この法律によって、独立行政法人(国から委託された法人)は、医薬品医療機器の審査、安全監視を行うとともに、研究開発の振興、さらに副作用等救済業務も行う事とされています。
医薬品等の安全が叫ばれている中、独立した監視機構が出来たので安心と評価しがちですが、どうもそうではないようです。驚くことに、その業務に製薬企業が入ってくるからです。
医薬品等の承認審査は厚労省(安全対策課、審査管理課、監視指導課)、研究の振興は厚労省(研究開発振興課)、副作用被害救済業務は医薬品機構(各製薬企業がお金を出し合っている)が行っています。もとはというと、薬害問題の教訓からこの三つは分離したのです。
安全性の確保と開発の促進という相反する業務が一緒になるのも不思議です。審査承認に製薬企業が加われば、承認審査にますます信頼が置けなくなるばかりか、副作用等のデータの非公開等も考えてしまいます。
過去にずさんな承認審査で薬害が起きていることは事実です。そしてこの法律だと薬害が起こったときの法的責任は問われないこととなっています(!)ので、無責任な判断を誘発しかねないと、各NPO団体や薬害オンブズパースンはこの法律に反対しました。ここでは、薬害被害者や患者などを役員に迎えた法人で、国民の視点に立脚した制度とすべき、としています。私は過去の薬害問題から、官と製薬企業が一緒になることに強く反対します。
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