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薬害事件に見る薬事法改正の必要性

薬害ヤコブ病大津訴訟弁護団
弁護士 永井 弘二

第1 過去の薬害事件の要因

1 サリドマイド事件

・ レンツ警告に対する対応
〜レンツ警告には科学的根拠がない(大日本製薬の調査団報告)?
 確定的に被害が出ることが確認されないと規制できない
→ 「疑わしきは規制する」の原則の徹底
・ 包括建議方式による承認
〜 西欧諸国で製造承認されている有名医薬品で効能等が適当なもの
杜撰な承認審査(アメリカFDAでは承認拒否)
→ 承認審査体制の再構築

2 スモン事件

・ 包括建議
・ 劇薬指定解除
・ 適応症の無限定な拡大
・ 神経毒性に対する知見情報の収集不徹底

→ 市場経済の下での医薬品等の安全確保
   情報収集・その有効活用(疑わしきは規制する)の徹底

3 薬害エイズ事件

・ 生物由来製品についての安全確保の不徹底
・ 旧厚生省・学閥を巻き込んだ企業擁護

→ 生物由来製品の汚染、交叉汚染に対する安全確保の必要性
   市場経済の下での医薬品等の安全確保体制の抜本的再構築

4 薬害ヤコブ病事件

・ 生物由来製品についての安全確保の不徹底
・ 危害情報収集の不徹底
   1978年までのヤコブ病の感染性、滅菌困難性の知見へのアクセス不足
・ 危害情報活用体制の不徹底
   1987年アメリカCDCレポートの看過

第2 薬害の再発防止のためのあるべき薬事法改正

1 厚生労働大臣の国民に対する義務の明示

・ 医薬品等安全性確保義務
・ 危害情報の収集・有効活用義務

2 厚生労働省の体制の整備・増強

・ 医薬品等の承認審査体制の抜本的改革
 厚生労働省の内部審査機関として、アメリカFDA並みの人的・物的組織の整備
・ 医薬品等の市販後監視体制の抜本的拡充
〜 市民参加型の医薬品等安全監視機関の設置

3 緊急命令等の規制権限の義務化

4 市民による厚生労働大臣の規制権限発動の申立制度

5 医薬品等危害情報の情報公開

6 訴訟救済時の立証負担の軽減

7 医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構の改組・改正

  1. 被害救済に専念
  2. 救済対象に「欠陥、汚染その他による危害」を追加。
  3. 損害賠償責任者の存在の有無に関わらず全ての被害を迅速に救済。
  4. 軽度の被害の場合にも救済対象とする。
  5. 機構の運営に市民等が参加し、被害救済の判定過程を透明化する。
  6. 除籍期間を伸長する。

第3 現在の厚生労働省の提案について

1 医療用具に係る安全対策の見直し

   医療用具(医療機器と改名)のリスク分類による段階的安全審査

2 バイオゲノムの世紀に対応した安全確保対策の充実

3 市販後安全対策の充実と製造承認制度の見直し

   製薬企業の安全対策を要請
   製造承認から元売り承認へ

4 製造承認体制の一元化(独立行政法人の設立)

以上

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