「東葛の健康」連載コラム 2001年2月〜6月
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No. | 月 | 表題 | 執筆者 |
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34 | 6月 | 命の叫び−ハンセン病訴訟 | 中村 建 |
33 | 5月 | エイズ研究班班長が無罪とは!! | 間 規子 |
32 | 4月 | 薬害ヤコブ病事件の即時解決を | 藤井 恵利 |
31 | 3月 | つらい花粉症と薬の効果 | 山田 真樹 |
30 | 2月 | 知っておきたいビタミン剤 | 川口 京子 |
クスリあれこれ No.34 2001年6月
中村 建
「病気の治療にいくんだからね」と六歳の男の子は、知らない男の人に手を握られました。家の前では、両親の涙の顔。「すぐ帰れるからね」と、知らない男の人。すぐ帰れるのに、なぜ両親はあんなに涙を流すんだろう。
男の子は不思議に思いました。これが、この後三十年にもわたる、ハンセン病収容施設への旅立ちでした。
ハンセン病国立療養所は悲惨でした。自由に表に出られない施設。
男の子は、療養所の小さい小山に上って毎日毎日自分の住んでいたお家の方を向いていました。
施設の中ではお金も「施設券」という内部でしか使えないお札。
両親にどんなに会いたくても、そんなことはできません。こうして、日本にいたおよそ三千人のハンセン病患者は、すべて収容施設に閉じこめられました。
ハンセン病に対しては、リファンピシン、DDS、エチオナミド、クロファジン等有効な薬剤がたくさんあります。
また、伝染病といわれていますが、すべての方に伝染するわけではなく、ある特定の免疫が低下している人しか羅患しません。
このようなハンセン病の患者さんが、長年療養所に閉じこめられていたのは、人権侵害以外の何ものでもありません。
5月11日、熊本地裁が「患者隔離」は憲法違反の人権侵害と国の責任を明確にしたのは当然です。
東葛病院薬局ではこの判決をうけ、総理・法務・厚生労働の各大臣に国が控訴しないよう要望書を送りました。
同23日、国は「控訴断念」を決定しました。長年にわたる原告のたたかいと国民のねがい、命の叫びが政治を動かした瞬間でした。
日本は、「らい予防法」など、感染症の人びとを隔離し、差別する政策をとり続けてきました。
一世紀にわたる人権侵害の解決に、大きな一歩をしるした今回の「控訴断念」を、差別のない社会を作り上げる第一歩にしたいと考えます。
クスリあれこれ No.33 2001年5月
間 規子
先月に引き続いて薬害の話になりますが、3月28日東京地裁の判決に胸がえぐられる思いをしました。
元帝京大学副学長の安部英被告に無罪が言い渡されたのです。十年の年月をかけてやっと和解を勝ち取ったHIV訴訟(薬害エイズ訴訟)をご記憶されていると思います。
安部被告は、血友病患者に非加熱製剤でHIV(エイズウイルス)を感染させ死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われていました。
裁判では安部被告にHIV感染の危険性を認識し、回避することが可能であったかが争点となっていました。薬害エイズの報道番組で安部被告はこんなことを言っています。
米国血友病患者の感染報道に不安を持ち、大丈夫なのかと問う日本の血友病患者に、「エイズは感染率の非常に低いもの、感染してもほとんど発症することはない」。
その一方、厚生省エイズ研究班班会では「毒を入れる思いで注射している」と。こうして危険な非加熱製剤が使われ続けたのです。
血友病の第一人者であり、厚生省エイズ研究班班長の安部被告が、血友病患者の血液製剤によるHIV 感染を危険と認知しながら、何の措置も提示せず使い続けたことは明白といえます。
ところが判決は危険性の予見は可能であったと認めながらも、その危険性は高い確率とはいえないため「無罪」としたのです。
エイズ治療はまだ十分ではありませんが進歩してきています。
HIV感染者への偏見も、消え去る日は近いと思います。しかし、薬害は彼らの罪の認知、猛省、謝罪なくしては繰り返されます。薬害の歴史が証明しています。
安部被告は「八十歳を超えた年寄りを責めてどうするんだ」と言っていました。
しかし、何十年も第一人者として医療に関わってきた安部被告だからこそ、この薬害のサイクルを断ち切るため、しつかり罪を認めて、償うべきだと思うのです。
この判決は薬害ヤコブの裁判にも大きく影響します。薬害に限ったことではありませんが、悪しき社会のサイクルを断ち切るためにどうあるべきか声にする大切さを感じています。
そして多くの方に薬害の裁判のゆくえに注目していただきたいと思います。
クスリあれこれ No.32 2001年4月
藤井 恵利
東葛病院では、患者さんの権利を守るため様々な問題に取り組んでいます。今日はその中でも薬害ヤコプ病事件の現状をお伝えします。
ヤコブ病とは?
発症すると脳がスポンジ状になり、発症後数ヶ月で植物状態となり、1〜2年で死に至る病気です。クロイツフェルト氏とヤコブ氏が発見した病気で、正式にはクロイツフェルト・ヤコブ病といいます。異常プリオンが病原体で、感染してから発症するまで十年以上かかります。
脳外科手術などで「ライオデュラ」というヒト転燥硬膜を移植された患者では、自然発症(百万人に一人)に比べ500倍もの確率でヤコプ病を発症しています。
国、企業に命を奪われて…
乾燥硬膜とは、脳の一部を手術した部分を覆う絆創膏のようなもので、人の死体から採取し製品化したものです。
感染を防ぐため一つの連休から一つの製品を作るのが通常ですが、Bブラウン社(ドイツ)は、この硬膜を変死体や密売を介して回収し、何百枚もの硬膜を一つの袋に入れて保管し、その上効果がないと分かっている滅菌法で処理していました。国は、医療用具扱いであるその製品を輸入承認しました。
アメリカでその危険性により警告を出されたにもかかわらず、国が回収命令を出したのは遅れること十年。その間にアメリカで回収命令が出た製品が、日本に大量輸入されたのです。
谷さん(被害者・故人)はこの十年の間に手術を受けた一人です。
けっして他人事ではない
日本にはこれまでに三十万人以上の人にライオデュラが使用されたといわれ、厚生労働省が把握しているヤコブ病感染者は72人です。いつ発症するかと不安をもって生活されている方もいますごしれからも発症患者がでる可能性は高いといわれています。
裁判傍聴に釆てください!!
薬害ヤコプ病被害者と家族が、厚生労働省、企業の責任を追及するための裁判を起こしています。
被害者と家族は、悲しみの中で、国、企業を変えるため、これから出るであろう被害者や家族の補償のためがんばっています。
現在は最終弁論中で、結審は、今年7月です。ぜひ裁判傍聴にご協力をお顧いします。
千葉県支える会結成
是非、みなさんも一緒に協力してもらえませんか?
支える会連絡先 左近充寛久 東葛総合法律事務所
松戸市松戸1281-29 047-367-1313
クスリあれこれ No.31 2001年3月
山田 真樹
暖か<なってきてスギ花粉も全盛期。毎年この時期には花粉症に悩まされているという方も多いと思います。
花粉症の主な症状は、連続して出るくしゃみ、水のような鼻汁、鼻づまりなどの鼻の症状と、眼のかゆみ、充血、涙目になるなどの眼の症状です。
ひどくなると、頭痛や微熱まで出ることもあります。
花粉対策はしっかりしましょう
花粉症の治療はまず、原因であるスギ花粉を避けることです。
例えば、天気の良い日、風の強い日は外出を控える。外出の時は眼鏡、マスクをする。
外出から帰ったら服についた花粉をはらい、洗眼、うがいをする。
家の中では窓や戸を閉めて花粉が入らないようにする。洗濯物は外に干さない…。
しかし、これを全部実行するのはとても大変なことです。
お薬は自分に合ったものを
次に、お薬を使った治療です。
花粉症の治療には主に抗アレルギー剤が使われます。
抗アレルギー剤は効果が現れるまでに時間がかかるので、普通は花粉が飛び始める1〜2週間前から飲み始めます。
抗アレルギー剤には色々種類があるので、自分にあったお薬を医師にご相談ください。
例えば、抗アレルギー剤には、一日2回飲む薬と、1回で良い薬があります。
また、抗アレルギー剤は、人によって眠くなることがありますので、車を運転される方は注意が必要です。
比較的眠くなりにくい薬もありますので、ご相談ください。
ひどいときは外用薬を
お薬を飲んでいても症状がひどい場合は外用薬を使った局所療法があります。
鼻の症状がひどい方は、点鼻薬(アルデシンAQネーザル)を一日4回、鼻をかんでからスプレーします。
眼の症状がひどい方は、メイン夕ー、ザジテンなどの目薬を一日4回さします。
症状がひどくなるとステロイド(フルオロメトロン)を使うこともあります。
花粉対策をきちんとし、お薬を定期的に使うことで、つらい花粉症の季節を乗り越えましょう。
クスリあれこれ No.30 2001年2月
川口 京子
薬局やコンビニエンスストアで色々な種類のサプリメントと言われる栄養補助食品を見かけると思います。今回はサプリメントの一つであるビタミンについてです。
ビタミンとは?
ビタミンは、食事によって摂らなくてはいけない栄養素の一つですが、ビタミン自身に栄養があるわけではなく、食物から摂る栄養素を体内でうまく利用するのに役立つ重要な物質です。
ビタミンには水に溶ける水溶性ビタミンと、脂肪に溶けて存在する脂溶性ビタミンとがあります。ビタミンB群とビタミンCは水溶性ビタミン。ビタミンA、 D、K、Eは脂溶性ビタミンになります。
ビタミン剤が必要な時
ビタミン剤が必要な時は、1)ビタミンが不足している時、2)ビタミンの摂っている量は十分だが、病気や薬がビタミンの働きのじゃまをして、利用率が落ちた場合です。
ビタミン過剰症
ところで、ビタミン剤は多く摂れば摂るほどいいというわけではありません。
それぞれのビタミンには必要量があり、それ以上多く摂っても、普段はあまり役に立ちません。ビタミン Bのように水溶性のビタミンは、少々摂りすぎても尿から体の外に出されるので、過剰症はまずおこりませんが、無駄になってしまいます。
脂溶性のビタミンAとD などは、多く摂りすぎると体内に蓄積されますので、過剰症をおこします。
ビタミンAの過剰によって(一日五千単位以上)頭痛、めまい、下痢、食欲不振がおこり、また毛が抜けやすくなります。妊婦の場合は胎児の奇形を引き起こすので、特に注意が必要です。
またビタミンDの過剰(一日二千単位[50μg]以上)によって食欲不振、多尿、脱力がおこり、また腎臓の機能が障害されます。
よって、医師から処方されているもの以外でビタミン剤を飲む時は、ぜひ医師か薬剤師に相談してから飲むようにしましょう。