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薬害ヤコブ病原告団統一要求書

2001(平成13)年8月8日

薬害ヤコブ病大津訴訟原告団
団長   谷 三一
薬害ヤコブ病東京訴訟原告団
団長   池藤 勇
薬害ヤコブ病大津訴訟弁護団
団長   中島 晃
薬害ヤコブ病東京訴訟弁護団
団長   畑山 實

はじめに

 薬害ヤコブ病訴訟は、本年7月大津地裁と東京地裁でいずれも審理を終結(=結審)し、来年3月には判決が言い渡されます。また、審理の終結にあたり、両地裁から当事者双方に和解の勧告がなされました。

 そこで、私たちはこの機会にあらためて、この裁判を通じて、私たちが何を目標にし、何を実現しようとしているか明らかにするために、この要求書を作成いたしました。

 私たちは、何よりも「迅速に、そして、被害者の納得のいく内容の解決」を強く望んでいます。それと同時に、私たちの闘いが、薬害ヤコブ病被害者の救済にとどまらず、わが国の薬害の再発防止・根絶に役立つものとなることをあわせて強く願っています。

 わが国では、これまでサリドマイド、スモン、薬害エイズ等の悲惨な薬害事件が多発し、その都度、国と企業が薬害の再発防止を誓約してきたにもかかわらず、またしてもヒト乾燥硬膜ライオデュラによるヤコブ病という重大な薬害事件の発生を招いたことは、まことに許しがたいことであり、21世紀の日本でこうした薬害を決して繰り返してはならないことを私たちは切に願うものです。

 この要求書は、こうした私たち被害者の切実で真剣な願いにもとづくものです。

 被告らが、加害者としての責任を自覚し、この裁判を早期に解決しようというのであれば、私たちの要求を全面的に受け入れるべきです。私たちは、薬害ヤコブ病被害者の早期救済と薬害の防止・根絶を願う広範な国民の理解のもとに、この要求の実現のために全力をあげて闘うことをここに宣言するものです。

私たちの要求

 私たちは、被告国、ならびに被告ビー・ブラウン社、同日本ビー・エス・エス、同山本和雄、同山本高嗣(以下、この4者を一括して被告企業という)に対して、次の措置をとることを要求します。

(1)早期全員一括解決

 被告国及び被告企業は、提訴患者全員について、ヒト乾燥硬膜ライオデュラの移植によって薬害ヤコブ病が発症したこと(因果関係)を認め、直ちに(遅くとも年内に)救済すること。

(2)国と企業の加害者責任の明確化

 被告国及び企業は、ヒト乾燥硬膜ライオデュラの移植によって、薬害ヤコブ病を発症させ、薬害ヤコブ病患者とその家族に耐えがたい苦痛と甚大な損害を与えたことに対し、加害者として損害賠償責任(=法的責任)があることをみとめること。(被告国及び企業の法的責任については、別紙I及びII参照)

(3)謝罪とその公表

 被告国及び企業は、薬害ヤコブ病患者とその家族に対し、悲惨なヤコブ病に罹患させたこと、また硬膜移植についての情報提供が極めて不十分であったこと、さらには訴訟の場で因果関係、責任、損害などを争い続け、かつこの間被害の救済について何らの措置もとらなかったことがヤコブ病患者とその家族の苦痛をいっそう耐えがたいものとしたことについて衷心より謝罪すること。また、謝罪の事実を公表するため、謝罪広告をはじめ必要な措置をとること。

(4)薬害ヤコブ病調査委員会の設置

 被告国は、薬害ヤコブ病の真相究明、責任の所在、同種の感染被害の再発防止等について必要な調査研究と提言を行うため、原告団と被害者を代弁する専門家及び第三者委員によって構成された調査委員会を設置すること。

(5)一切の損害の賠償

 被告国及び企業は、原告及び全ての薬害ヤコブ病被害者に対し、その被った一切の損害を賠償すること。

(6)薬害ヤコブ病患者の医療、療養・看護、福祉に関する措置

 被告国は、1999年2月18日付「薬害ヤコブ病患者の医療・療養及び看護に関する緊急要求書」にもとづいて必要な措置をとること(別紙III参照)。とりわけ、(イ)患者が人間らしい医療を受けられるよう入院病床・専門医療の確保、(ロ)在宅患者(自宅治療患者)対策の拡充、(ハ)全ての医療費等の保障、健康管理手当、介護費用の支給、(ニ)ヤコブ病の診断・治療法の研究・開発の推進、(ホ)被害実態の調査と医療、看護・介護、福祉に関する研究の推進およびこれにもとづく施策の拡充、(ヘ)ヤコブ病に対する偏見の除去等の啓蒙活動の推進、(ト)患者家族に対する心理的ケアを含む相談体制を整備し、必要な指導援助を行うための支援機構の創設等の措置をとること。  被告企業は、これに対して必要な費用を負担すること。

 (注)この点に関しては、別途原告団から要求書を提出する。

(7)薬害の再発防止・根絶に関する措置

(イ)被告国及び企業は、医薬品・医療用具等(以下、医薬品等という)によって人の生命・健康に不測の危害を与えることを未然に防止するために、承認時はもとより承認後においても、世界最高の水準で文献調査等の情報収集を徹底して行うなどにより、医薬品等の安全性を確保する義務を負っていることを認めるとともに、本件ヤコブ病のような悲惨な薬害を再び繰り返してはならないとの決意のもとに、医薬品等の安全性に関する情報収集体制の拡充強化を図り、医療関係者・患者に対する情報の迅速かつ十分な提供をはじめ、収集された情報に広く国民がアクセスできる体制を整備して、情報公開の徹底をはかるなど、万全の措置をとることを被害者と国民に確約すること。

 (注)これまでスモン、サリドマイド、薬害エイズ等の薬害事件で同様の確約がなされているにもかかわらず、薬害の再発防止に関して実効ある措置が講ぜられていないことから、実質的な措置をとることについての確約を求めるものである。

(ロ)被告国及び企業は、絶えず前述した文献調査等の情報収集を行い、医薬品等の安全性にいささかでも疑いが生じた場合には、「疑わしきは規制する」の原則にもとづき、その危険性の程度に応じて直ちに必要な危険防止措置をとる義務のあることを認めること。

(ハ)被告国は、医薬品等の安全確保について監視し、必要な調査と勧告を行う権限をもち、市民が委員として参加する薬害の防止のための機関として、薬害監視機構を設置すること。また、この監視機構が薬害防止上必要があると判断した場合には、厚生労働大臣に対し、必要な措置をとるよう申し出をしなければならないものとし、この申し出があった場合には、厚生労働大臣は、すみやかに薬事法に定める必要な措置をとらなければならないものとすること。

(ニ)被告国は、わが国で薬害が多発していることを特別に重視し、薬害を防止するため医学、歯学、薬学、看護学等の専門教育のなかで薬害問題の研修を義務づけるとともに、学校教育や社会教育のなかで、薬害問題を取り上げ、薬害教育を積極的に推進すること。

(ホ)被告国は、上記(イ)ないし(ニ)の措置を実効あらしめるため、薬事法を改正し、1)国が医薬品等の安全確保義務を負っていることを明記する、2)医薬品等の安全性に関する情報提供の拡充強化をはかる、3)薬害監視機構の設置と薬害防止のための措置の申出および厚生労働大臣に対する薬害防止措置の義務づけ等必要な措置を講ずること。

(8)ヒト・動物由来の製品による感染被害の防止と被害救済のための法制度の確立

 被告国は、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法を改正し、ヒト・動物由来の医薬品等による感染被害に対する救済制度を確立するとともに、医薬品等の被害の適正かつ迅速な救済と補償を実現するため、同法の運用の充実改善を図ること。またヒト・動物由来の医薬品等の安全性を確保するため必要な法的規制を講ずること。

(9)潜在患者の追跡調査と未提訴患者の救済のルールの確立

(イ)被告国は、引き続き薬害ヤコブ病の追跡調査に取り組むとともに、未提訴患者に対して、患者家族にヒト乾燥硬膜移植の事実とヤコブ病発症に関する情報提供を迅速かつ的確に行うこと。ヒト乾燥硬膜の移植をうけた者については、未発症の場合であっても、当事者の求めに応じて情報の開示に積極的に取り組むとともに、発症の不安に対する心理的ケアを含む相談体制を確立すること。また、追跡調査をすすめるため、ヤコブ病患者やヒト乾燥硬膜の移植を受けた者に関するカルテ等医療記録が長期にわたり保存されるよう特別の措置を講ずること。

(ロ)被告国及び企業は、将来提訴する患者に対しても、既提訴患者と同一の条件で救済がうけられるよう私たち原告団と協議のうえで、救済のルールをつくること。

(10)継続協議に関する措置

 被告国は、私たち原告団の以上の要求事項に関して、原告団の意向を常に反映させるため、厚生労働大臣との協議を含む継続的な協議の場を設定すること。

(11)裁判維持遂行費用等の負担

 被告国及び企業は、私たち原告らが、この裁判の維持遂行に要した費用(訴訟費用・弁護士費用・広義の裁判維持遂行費用)の全てを負担すること。

以上

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