くすりの話 あれこれ ~代々木病院~

No.109:子宮頸がん予防ワクチン 患者6名に初救済

一由久美子 薬剤師 たくみ外苑薬局

子宮頸がん予防ワクチン(以下「HPVワクチン」)の接種を受けた少女らから、慢性的な疼痛・運動障害・認知力や記憶力の低下などの訴えが相次いでいる問題で、厚生労働省は副作用の疑いとして報告された2584人の追跡調査の結果を発表し、回答のあったうちの1割の186人の副作用が回復していないことを明らかにしました。



HPVワクチンは、2009年9月から販売が開始され、2013年4月から公費負担の定期接種となりました。しかし、そのわずか2か月後に副反応の発生が明らかとなり、定期接種を積極的に推奨すべきではないということになりました。この間370万人が接種を受けたとされていますが、分母は出荷数、分子は医師の報告数といわれ、被害の報告は氷山の一角と考えられます。

子宮頸がんには、「ヒトパピローマウイルス」と呼ばれるウイルスが関わっています。このウイルスに感染しても、90%以上は2年以内に免疫により、ウイルスは体内から自然に消失されます。しかし、自然に排泄されず数年から数十年に渡って持続感染した場合には、がんになるおそれがあるされます。その割合は0・1~0・15%とごくわずかですが、ワクチンを接種しても検診は必要になります。

ワクチンには、一般に「アジュバンド」と呼ばれる人の免疫システムを強く刺激する化学物質が混ぜられています。HPVワクチンには、他のワクチンよりも多くアジュバンドが添加され、それが接種後の自己免疫を引き起こしやすくし、副作用に関与しているのではないかと指摘する専門家もいます。



ワクチンによる健康被害の医療費の支援は、国よりも地方自治体が先行しています。昨年6月から全国に先駆けて、給付制度を横浜市が立ち上げ、神奈川県内の患者や牛久市、武蔵野市などへ広がっています。名古屋市は定期接種した全員の追跡調査をはじめるそうです。また、救済も定期接種以前の任意接種と定期接種に差がありましたが、改善されてきています。

厚生労働省は、残念ながら「心因性」の立場は変えていません。ワクチン接種の被害実態を接種者全例で追跡調査を行い、被害と向き合い、原因を究明し、副作用の救済を国として推進していくことが必要ではないかと考えています。

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