サプリメントに頼らない生活

No.88:グルコサミン、膝関節への効果は気休め

藤竿伊知郎(外苑企画商事、薬剤師)

グルコサミンは1990年代末から広まり、「歩く力を保つ」商品として人気を呼んでいます。しかしながら、軟骨成分の補給だけで痛んだ関節を補修するという理屈には、無理があります。

皮膚や軟骨など体を支える構造の結合剤として、ヒアルロン酸とコラーゲン、コンドロイチン硫酸は重要です。ヒアルロン酸を関節腔注射用医薬品として使うことから勘違いされやすいのですが、結合剤としてのこれらは単純な吸水ジェルや、潤滑油として使われるのではなく、構造を持って軟骨に合成されることによって機能を持ちます。

グルコサミンは、このヒアルロン酸を構成する2種類の糖の1つです。部品となる糖は、体内にたくさんあるブドウ糖を原料として合成されています。半分の部品(中間原料)だけ補充して、ヒアルロン酸の再生が進むと考えるのは都合が良すぎます。

国立健康・栄養研究所が公開する「素材情報データベース」で紹介された論文では、臨床試験での効果も否定されています。2014年3月までの無作為化プラセボ対照試験5報について検討した結果、変形性関節症患者におけるグルコサミンの摂取は、長期間(2年間、3報)、短期間(3~6か月間、3報)のすべてで関節疼痛や機能性の改善を認められなかったのです。

膝関節の違和感に対する効果は、服用者の期待感によるものです。広告の言葉に惑わせられないようにしましょう。

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