サプリメントに頼らない生活

No.70:飴をなめてコロナウイルスを予防できるか

藤竿伊知郎(外苑企画商事、薬剤師)

前回、柿渋を入れた「ウイルス感染予防の切札の飴」が、誇大広告で問題となったことを紹介しました。「切札」という表現が大げさだとしても、医科大学の研究でコロナウイルスを不活化したので、少しぐらいは役立つと思われるのではないでしょうか。

今年になって大学が食品会社と共同して発表した研究では、飴を5分間なめた唾液とウイルスを試験管に入れ5~10分間反応させた結果、ウイルス数が1万分の1になっています。私は、このレベルの研究で予防をうたうことは大問題だと思っています。

柿渋を食べると、タンニンが舌や口の粘膜に結合して強い渋み(収斂味)を感じます。柿渋のタンニンが、ウイルス表面のタンパク質と結合し不活化する効果を持つことは以前から知られていました。

柿渋がウイルスの感染力を消す強い力を持つことは間違いありません。しかし、予防効果を実証するには動物実験・臨床試験とまだ多くの研究が必要です。薬剤師からみると、口の中に薬剤を入れても、飲食ですぐに流れます。ウイルスを迎え撃てる濃度のタンニンを口の中で咽頭に保つことは、製剤設計として困難を極めると思います。また、どんな人でも口腔粘膜を傷害しない安全性も求められます。

物質の有効性だけに注目するのは、昨年8月におきた大阪府知事の発言によりポピドンヨードうがい薬が品不足になるような間違いに繋がります。

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