サプリメントに頼らない生活

No.19:過剰な効果をうたうトクホ飲料に行政措置

藤竿伊知郎(外苑企画商事、薬剤師)

3月1日、特定保健用食品の広告が健康増進法に違反するとして、消費者庁による初めての是正勧告がありました。ライオンが販売する「トマト酢生活 トマト酢飲料」が、高血圧を改善できる効果があると誤認させるという指摘です。この製品は、0.75gの酢を含有しています。

広告では”驚きの「血圧低下作用」”と臨床試験の結果をもとに効果を強調しています。この試験はプラセボ(偽薬)との無作為対照試験で、収縮期血圧が平均140mmHgの高血圧診断基準前後の被験者90名に12週間服用させ、6mmHgの降圧効果があったというものです。
この効果は、野菜・果物をたくさんとり脂質の摂取を控える、食生活改善と同レベルです。高血圧の初期には、減塩・体重の減量・運動・節酒などとあわせ、総合的な生活習慣の改善が指導されます。
高血圧は、脳卒中・心臓病・腎臓病などの重大な疾病の原因として、治療されます。手軽に飲料で血圧を下げられ、食事習慣を変えなくてすむなら、便利だと思うでしょう。しかし、健康寿命を延ばすには、血圧の数値を下げるだけでは不十分で、動脈硬化を防ぐなど総合的な生活習慣病対策がセットで必要です。

特定保健用食品は、現在1237品目が表示許可を受けていますが、過剰な宣伝が目立つようになりました。トマト酢飲料は「血圧が高めの方に適した食品」として、食生活の改善を助けることは期待できますが、「薬に頼らずに、食生活で血圧の対策をしたい」方へ、これだけで足りるかのような宣伝をしたことは問題です。
花粉症の方にとって、くしゃみ 、鼻みず、鼻づまりでつらい季節です。花粉症の患者は増え続け、2008年の調査では3割に達しています。薬が効かずサプリメントに期待が高まっています。
厚生労働省の研究班報告では、アレルギー性鼻炎で受診している方の2割が民間療法を併用しています。「健康食品」として、甜茶と乳酸菌を利用する方が多いのですが、患者さんの評価ではそれぞれ14%と30%以下の効果しかありません。これは、信じて飲むことで効果が出る偽薬の効果と差がないレベルです。

商品の多くは、体験談を元に宣伝販売され、有効性を論文で示している製品は限られます。甜茶の研究論文を国立健康・栄養研究所の「健康食品」の素材情報データベースをみても、信頼度の低い研究だけです。
有効成分が特定され、臨床試験をしているものに「乳酸菌」と、機能性表示食品の「べにふうき茶」があります。比較対照と比べて統計的差は認められますが、数十人規模の試験なので、どれだけの利用者に効果があるのか、市販後の評価を待つ段階です。医薬品ほど即効性はなく、花粉が飛び始める1カ月前から飲むと効果が高くなると勧めています。
これらの茶や乳酸菌は、気になる副作用もないのですが、危険な「健康食品」も出回っています。2007年2月、スギ花粉加工食品をのんだ女性が、約30分後に全身に蕁麻疹が出現し、息苦しくなり医療機関を受診したが、意識不明状態に陥った問題がありました。
怪しい商品には手を出さないようにしましょう。

サプリメントに頼らない生活 TOPへ戻る≫

TOPへ