■ 特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第\因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法案の概要 1 前文  フィブリノゲン製剤及び血液凝固第\因子製剤にC型肝炎ウイルスが混入し、多くの方々が感染するという薬害事件が起き、感染被害者及びその遺族の方々は、長期にわたり、肉体的、精神的苦痛を強いられている。  政府は、感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについて責任を認め、感染被害者及びその遺族の方々に心からおわびすべきである。さらに、今回の事件の反省を踏まえ、命の尊さを再認識し、医薬品による健康被害の再発防止に最善かつ最大の努力をしなければならない。  もとより、医薬品を供給する企業には、製品の安全性の確保等について最善の努力を尽くす責任があり、本件においては、そのような企業の責任が問われるものである。  C型肝炎ウイルスの感染被害を受けた方々からフィブリノゲン製剤及び血液凝固第\因子製剤の製造等を行った企業及び国に対し、損害賠償を求める訴訟が提起されたが、これまでの五つの地方裁判所の判決においては、企業及び国が責任を負うべき期間等について判断が分かれ、現行法制の下で法的責任の存否を争う訴訟による解決を図ろうとすれば、さらに長期間を要することが見込まれている。  一般に、血液製剤は適切に使用されれば人命を救うために不可欠の製剤であるが、フィブリノゲン製剤及ぴ血液凝固第\因子製剤によってC型肝炎ウイルスに感染した方々が、日々、症状の重篤化に対する不安を抱えながら生活を営んでいるという困難な状況に思いをいたすと、我らは、人道的観点から、早急に感染被害者の方々を投与の時期を問わず一律に救済しなければならないと考える。しかしながら、現行法制の下でこれらの製剤による感染被害者の方々の一律救済の要請にこたえるには、司法上も行政上も限界があることから、立法による解決を図ることとし、この法律を制定する。 2 支給対象者とその認定 (1) 支給対象者は、後天性の傷病について特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第\因子製剤の投与を受けたことによって、C型肝炎ウイルスに感染した者(注1)及びその相続人とする。  (注1)その者からの母子感染によって感染した者を含む。治癒した者も対象となる。 (2) 製剤投与の事実、因果関係の有無、症状は、裁判所が認定する。 3 給付内容 (1) 症状に応じて次に定める一時金(名称は、「給付金」とする。)を支給する。  イ 慢性C型肝炎の進行による肝硬変・肝がん・死亡    4,000万円  ロ 慢性C型肝炎    2,000万円  ハ イ・ロ以外(無症候性キャリア)    1,200万円  (注2)給付金は、医療、健康管理等に係る経済的負担を含む健康被害の救済を図るためのものとする。  (注3)各一時金の水準は、大阪高裁和解骨子案に示されたもの(弁護士費用分を除いたもの)である。 (2) 給付金の支給を受けた後10年以内に症状が進行した場合、その症状に応じた一時金と既に受領した一時金との差額(名称は、「追加給付金」とする。)を支給する。症状進行の判断は、医師の診断書をもって行う。 4 請求期間 (1) 給付金の請求は、法施行後5年以内に行わなければならない。  (注4)法施行後5年以内に訴えの提起又は和解・調停の申立てを行い、法施行後5年以降に判決が確定又は和解・調停が成立した場合には、当該確定日又は成立日から1月以内に行わなければならない。 (2) 追加給付金の請求は、症状が進行したことを知った日から3年以内に行わなければならない。 5 支給事務  給付金の支給事務は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構に行わせることとし、同法人に、そのための基金を設置する。 6 費用負担  給付金の支給に要する費用は、いったん全額を国が負担した上で、企業も応分の負担を行う。  (注5)厚生労働大臣は、費用負担の方法・割合について、企業と協議の上、その同意を得て、あらかじめ基準を定めるものとする。 7 その他 (1) 政府は、医療機関による本件製剤の投与を受けた者の確認の促進、被投与者への検査の呼びかけに努めるとともに、本法の内容の周知を図るものとする。 (2) 給付金等の請求期限については、施行後における給付金等の支給の請求の状況を勘案し、必要に応じ、検討が加えられるものとする。 (3) 政府は、C型肝炎ウイルスの感染被害者が安心して暮らせるよう、肝炎医療の提供体制の整備、肝炎医療に係る研究の推進等必要な措置を講ずるよう努めるものとする。  (注6)投与事実等の証明方法、恒久対策や再発防止対策に関する定期協議の場の設置、本件事件の検証を行う第三者機関については、和解の際の基本合意書に盛り込む。 8 施行日  公布の日とする。 全文は下記から  http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/g16801023.htm ■ 【衆議院・附帯決議】ウイルス性肝炎問題の全面解決に関する件  特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第\因子製剤によるC型肝炎ウイルスの感染という薬害事件は、多くの被害者を生んだが、これ以外の要因によるウイルス性肝炎感染者も多数おり、それらの方々は症状の重篤化に対する不安を抱えながら生活を営んでいる。このような状況を踏まえ、政府は、「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第\因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法」の施行及び今後の肝炎対策の実施に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。 一 「投与の事実」、「因果関係」及び「症状」の認否に当たっては、カルテのみを根拠とすることなく、手術記録、投薬指示書等の書面又は医師、看護師、薬剤師等による投与事実の証明又は本人、家族等による記録、証言等も考慮すること。 二 法律の施行の日から五年に限られている給付金の支給の請求については、施行後における請求状況を勘案し、必要があると認めるときは、その期限の延長を検討すること。 三 約三百五十万人と推計されているウイルス性肝炎患者・感染者が最良の治療体制と安心して暮らせる環境を確保するため、医療費助成措置等の早期実現を図ること。 四 先天性の傷病の治療に際して血液製剤を投与されウイルス性肝炎に感染した者への必要な措置について、早急に検討すること。 五 特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤以外の血液製剤の投与によるウイルス性肝炎の症例報告等を調査し、その結果を踏まえて受診勧奨等必要な措置について、早急に検討すること。  右決議する。 http://www.shugiin.go.jp/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Ketsugi/kourouF17F94B3CE077860492573CA001954CE.htm?OpenDocument