確認書  ヒト乾燥硬膜ライオデュラの移植によりクロイツフェルト・ヤコブ病(以下「ヤコブ病」という。)に感染した患者本人とその家族・遺族が大津地方裁判所及び東京地方裁判所に提起した損害賠償請求訴訟(以下「本件訴訟」という。)の原告団、弁護団及び薬害ヤコブ病被害者・弁護団全国連絡会議(以下「全国連」という。)と、厚生労働大臣及び被告ビー・ブラウン・メルズンゲン・エー・ジー(以下「被告ビー・ブラウン」という。)、同日本ビー・エス・エス株式会社(以下「被告日本ビー・エス・エス」という。)、同山本和雄、同山本高嗣(以下この4者を総称して「被告企業ら」という。)は、大津地方裁判所平成13年11月9日付け所見及び東京地方裁判所平成13年11月14日付け所見並びに両地方裁判所の平成14年2月22日付け和解案に基づき、ヒト乾燥硬膜ライオデュラの移植によりヤコブ病感染の被害を受けたすべての患者とその家族・遺族(以下「ヤコブ病被害者」という。)が被った未曾有の被害を救済するため、裁判上の和解を成立させることによってこの問題の全面的解決を図ることにつき、以下のとおり合意に達したことを確認する。 第1 和解に至る経過  平成8年11月大津地方裁判所に、平成9年9月東京地方裁判所に本件訴訟が提起され、合計20名の患者に係る両訴訟は平成13年7月に結審した。結審に当たり、両地方裁判所は早期全面解決のために和解を勧告した。そして同年11月9日に大津地方裁判所が、同月14日に東京地方裁判所がそれぞれ別紙の所見を示し、同月22日全当事者がこの所見を踏まえて和解手続を進めることに同意した。翌平成14年2月22日、両地方裁判所は和解金額に関して別紙の和解案を示し、全当事者は、いずれもこれを受け入れ、更に協議を重ね、本日、ここに本件訴訟を和解によって全面的に解決することに合意した。 第2 誓約 1 厚生労働大臣及び被告企業らは、本件について両地方裁判所が示した前記所見の内容を真摯かつ厳粛に受け止め、ヒト乾燥硬膜ライオデュラの移植によるヤコブ病感染という悲惨な被害が発生したことについて指摘された重大な責任を深く自覚、反省し、原告らを含む被害者が物心両面にわたり甚大な被害を被り、極めて深刻な状況に置かれるに至ったことにつき、深く衷心よりお詫びする。 2 イ 厚生労働大臣は、サリドマイド、キノホルムの医薬品副作用被害に関する訴訟の和解による解決に当たり、薬害の再発を防止するため最善の努力をすることを確約したにもかかわらず、本件のような悲惨な被害が発生するに至ったことを深く反省し、その原因の解明と改善状況の確認に努めるとともに、安全かつ有効な医薬品・医療用具(以下「医薬品等」という。)を国民に供給し、医薬品等の副作用や不良医薬品等から国民の生命・健康を守るべき重大な責務があることを改めて深く自覚し、さらに、医薬品等の安全性に関する情報収集体制の拡充強化を図り、医療関係者等に対する情報の迅速かつ十分な提供を始め、こうした情報に広く国民がアクセスできる体制を整備して、情報公開の推進と収集した情報の積極的な活用に努める。万一、医薬品等の安全性、有効性、品質に疑いが生じた場合には、直ちに当該医薬品等について科学的視点に立った総合的な評価を行うとともに、それに止まらず、直ちに必要な危険防止の措置を採るなどして、本件のような悲惨な被害を再び繰り返すことがないよう最善、最大の努力を重ねることを固く確約する。 ロ 厚生労働大臣は、我が国で医薬品等による悲惨な被害が多発していることを重視し、その発生を防止するため、医学、歯学、薬学、看護学等の教育の中で過去の事件等を取り上げるなどして医薬品等の安全性に対する関心が高められるよう努めるものとする。 3 厚生労働大臣は、生物由来の医薬品等によるHIVやヤコブ病の感染被害が多発したことにかんがみ、これらの医薬品等の安全性を確保するため必要な規制の強化を行うとともに、生物由来の医薬品等による被害の救済制度を早期に創設できるよう努める。 4 被告企業らは、安全な医薬品等を消費者に供給する義務があることを改めて強く自覚し、本件ヤコブ病のような悲惨な薬害を再び繰り返さないよう、最善、最大の努力を重ねることを固く確約する。 第3 本件和解の内容  本件和解条項のとおり。 第4 生存患者療養手当 1 被告ビー・ブラウンは、和解成立後も、ヤコブ病による最初の入院日を起算点とする療養期間が2年間を超える生存原告患者に対し、その生存中、生存患者療養手当として、2年を超える期間1ヶ月につき20万円を支払うものとする。 2 和解成立後に生存患者の上記療養期間が2年を超えるに至った場合及び生存患者療養手当の支払を受けている原告患者が死亡した場合の取り扱いについては、原告ら訴訟代理人と被告ビー・ブラウンとの間で別途締結する合意書によることとする。 第5 その他の対策等について 1 厚生労働大臣は、ヤコブ病患者の入院病床・専門医療の確保、差額ベッド代の解消等の入院患者対策の充実、在宅患者(自宅治療患者)対策の充実、ヤコブ病の診断・治療法の研究・開発の推進及びヤコブ病に関する正しい知識の普及・啓発に努める。 2 厚生労働大臣は、患者家族・遺族に対する精神的ケアを含む相談活動などの支援・援助事業を行うことを目的とする支援機構(サポート・ネットワーク)が設立された場合には、その活動に対する支援を検討する。 3 厚生労働大臣は、硬膜移植歴を有する者を含むヤコブ病患者の積極的な調査に引き続き取り組むとともに、ヤコブ病被害者がヒト乾燥硬膜移植の事実とヤコブ病発症に関する情報を得られるよう配慮するものとする。また、脳外科手術等を受けた者については、当事者の求めに応じて、ヒト乾燥硬膜の移植を受けたか否か等についての確認が可能となるような措置について検討する。 4 被告ビー・ブラウンは、原告らに対し、上記2記載のサポート・ネットワークへの支援及びヤコブ病被害者の慰霊、遺族・患者家族支援等のために、金1500万円を、平成14年5月31日限り、全国連の指定する銀行口座に振込送金して支払う。 5 被告山本和雄及び同山本高嗣は、原告らに対し、ヤコブ病被害者の慰霊、遺族・患者家族支援等のために、合計金300万円を、平成14年5月31日限り、全国連の指定する銀行口座に振込送金して支払う。 第6 継続協議  厚生労働大臣は、本確認書第2の2、第2の3及び第5の1ないし3で確認された事項並びにこれらに関連する事項につき、原告らヤコブ病被害者と継続的に協議する場を設定する。 第7 未和解原告ら及び未提訴者の扱い 1 現在両地方裁判所に提訴していて今回和解の対象となっていない原告ら(以下「未和解原告ら」という。)については、本和解成立後、速やかに患者についてのライオデュラ移植によるヤコブ病発症の事実について、証拠調べを行った上、当事者で確認を行い、順次和解の対象とする。 2 未和解原告らについての和解の内容は本件和解に準拠するものとする。ただし、未和解原告らに対して支払うべき和解金額のうち弁護士費用については、次の基準によるものとする。 (1) 両地方裁判所において、平成13年7月16日までに提訴した原告らについては、ヤコブ病の患者1名当たり金300万円 (2) 上記以降に提訴した原告らについては、ヤコブ病の患者1名当たり金180万円 3 未提訴者についても提訴後は上記未和解原告らと同様とする。 4 被告企業らは、本件訴訟と同種の訴訟が大津地方裁判所に提起された場合には、民事訴訟法に定める管轄の有無にかかわりなく、管轄違いの抗弁を提出しないで応訴する。  平成14年3月25日 薬害ヤコブ病大津訴訟原告団団長 薬害ヤコブ病東京原告団団長 薬害ヤコブ病大津訴訟弁護団団長 薬害ヤコブ病東京弁護団団長 薬害ヤコブ病被害者・弁護団全国連絡会議事務局長 厚生労働大臣 被告ビー・ブラウン・メルズンゲン・エー・ジー法務,人事及び労務担当取締役 クラウス ホーファー 被告日本ビー・エス・エス株式会社代表取締役 被告本人