第5回全日本民医連学術・運動交流集会
「薬剤活動」分科会発表
2001年9月21日、京都国際会館
比田井 明憲、楠本 由美子、林 裕子(たくみ外苑薬局)
たくみ外苑薬局は、薬剤師18名で、1日平均350枚の処方せんを受けつけている調剤薬局です。在宅訪問活動は6年目を迎え、3名の専任薬剤師が担当しています。
介護保険施行後の月平均訪問患者は33人、のべ60件となっています。
今回は、薬剤訪問を通して療養生活の実態に沿った支援とはいかなるものなのか、症例を検討したので報告します。
| 症例 1 A.Nさん 70歳代 女性 要介護度5 疾患 頚髄損傷による四肢麻痺、褥瘡、類天疱瘡、心不全 ADL ベッド上全介助 バルン留置 処方 プレドニン 1.5T グリセチンV 4T ラニラピッド 0.5T タベジール 2T スローケー 1T 1× ハイボン 2T 2× リサモール 3T カイロック3T レクチゾール 3T 3× 等 |
症例1は、代々木病院往診科や訪問看護ステーションと連携し、援助した例です。
A.Nさんは階段から転落し、頸髄を損傷し四肢麻痺となった方で、1999年11月に、褥瘡・類天疱瘡加療のため入院となり、2000年6月退院後はバルーン留置のまま、在宅での療養生活に入りました。
A.Nさんに支援できたこと
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この患者さんに支援できたことを、5点挙げました。
A.Nさんは、4週間ほど37℃〜38℃の熱が続き、抗菌剤を投与しても解熱しませんでした。訪問を続けていく中で、その原因が、薬剤性ではないか?と疑い、主治医に、カイロックとグリセチンVおよびレクチゾールの発熱に関する副作用情報を提供しました。
特に、レクチゾールの重大な副作用であるD.D.S.症候群の可能性についての資料も合わせて添付し、打診しました。
この際主治医は臨時往診しています。往診科看護婦は、お薬情報をもとに、レクチゾールを一包化包装から取り出してきた結果、5日後解熱傾向になりました。
※ D.D.S.症候群(発熱、皮疹、リンパ節腫脹、単核細胞症、肝炎等の症候群)
以上が症例1の患者さんに支援できたことです。
| 症例 2 G.Hさん 70歳代 男性 要介護5 疾患 多発性脳梗塞、 前立腺癌、 高血圧、 尿閉 ADL ベッド上介助 バルン留置 利用サービス 往診 2回/月、 訪問看護 2回/週、 訪問入浴 3回/月、 訪問介護 2回/週、 薬剤訪問 2回/月 背景 G.Hさんと介護者は、自分たちの要求を医療関係者へうまく伝えられない、不満を溜め込む傾向がある。薬剤師には本音をもらすことが度々ある |
症例2は往診科や、ケアマネジャーと連携し、援助した例です。
G.Hさん 70歳代、男性、多発性脳梗塞後遺症で、左半身麻痺のため、べッド上介助、要介護5です。スライドに示したように様々な介護サービスを利用して、在宅生活を続けています。本人には発語障害があり、介護者も在日韓国人のため日本語でのコミニュケーションが十分取れず、自分達の要求をうまく伝えられずにいました。そのような事柄でも、薬剤師には本音をもらすことが度々ありました。
| 症例2 薬剤師の支援 #1 より適切な薬物療法の実現 #2 担当ケアマネジャーとの連携 #3 介護用品や機能性食品の販売 |
この患者さんに支援できたことを述べます
G.Hさん負担分サービス費用の比較
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また、本人や介護者は、金銭的な面も含め、30分で行なう訪問看護のサービスについては理解が得られず不満を訴え、対話や清拭など身体介護を中心にした2時間のヘルパーサービスを希望していました。 担当のケアマネジャーと連携し、医学的視点に基づいた訪問看護のサービス内容を見直しながら、要望に沿ったケアプランの作成に協力しました。
まとめとして、これら症例を通じて今後の薬剤訪問の課題と、考察をのべます。
1. 訪問薬剤管理指導の充実
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まず、薬剤指導の充実についてです。
何回か訪問を重ねていくと、患者さんの訴えがいつも同じである。薬剤師のアプローチも画一化し、指導に行き詰ることもありました。現在はこれら症例を通じPOSを取り入れ、個々の患者の適切な薬物療法の目標を設定し、問題を明確化し、問題リストを作成しています。このようにして、担当薬剤師間で情報を共有化し、他のスタッフにも通じていけたらと考えています。
2. 連携の強化
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次に.連携の強化について考えてみました。
現状は、病院薬剤師との連携は十分でありません。今後は、情報提供書を作成し入院患者さんの(往診時の)調剤方法や、在宅での管理方法などの情報は伝えてゆきたいと思います。逆に院内薬局からこちらへの申し送りもあれば、退院後の指導がスムーズにいきます。さらに相互連携を深めるため、医療、福祉のスタッフ、ケアマネジャーに対しても、情報提供書を作成し活用していけたらと考えています。
サービス利用料の比較
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最後に、医療スタッフとしての位置付けについて、考察します。
当薬局では訪問患者のうち、33名中29名が介護保険を利用しています。介護保険下ではサービスを提供するときには時間的・利用限度額などの制限があります。
しかし薬剤訪問は、時間あたりの管理指導料ではなく、限度額から“別わく”となっている、といったメリットがあります。
よって、先ほどの症例のような“自分たちの要求をうまく伝えられずにいる”方々の訴えや悩みにも、時間を気にせず相談にのることが出来ます。
また、老人世帯において、夫婦合わせた限度額でサービスを利用し、何とか在宅生活を維持している場合、夫が入院すると、妻の介護度だけではヘルパーや、訪問看護などのサービスが十分に入れなくなり、往診科と薬局で支えなければならない、という状況も生まれてきています。
さらに、往診科から具体的に、訪問日当日の、患者さんの自覚症状の変化・客観的な顔色の変化など、治療上必要な患者情報を、要求され始めています。これに応えるためにも、今後、私たちは、薬剤師の専門性を生かした活動と、在宅患者を支える医療スタッフとしての力量を共に高め、患者さんの支援を行っていきたいと思います。