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文章の書き方・文書の作り方

藤竿伊知郎

 わかりやすく読みやすい文書を作成するための方法論を整理してみます。随時改訂していきますのでご意見をお寄せください。


目次

  1. ■ 企画編 ■
    1. 目的に応じた文書量
    2. 文書構成の階層表現
  2. ■ 入力編 ■
    1. 漢字をへらす
    2. 正しい区切り記号の用法
    3. 数字表記のルール
    4. カタカナ表記のルール
    5. 避けたい表現
    6. 同音異義語の使い分け
  3. ■ 出力編 ■
    1. 読みやすいレイアウト
    2. 余白を生かすレイアウト例
    3. 読みやすい文字組み体裁
    4. 文字サイズの選び方
    5. 十分な行間を
    6. シンプルな書体で
  4. ■ 参考資料 ■
  5. ■ 改版履歴 ■
  6. ■ 付録 ■
    1. キーボードの記号の読み方


■ 企画編 ■

◇ 目的に応じた文書量

 野口悠紀雄氏の指摘するように、文書(文章)には適切なサイズがあります。人に伝えたいことをまとめるにあたって、冗長でなく不足もないサイズを目的別に4段階に分けます。

文章の4つのレベル

レベル 名称 字数 事務文書 雑誌・本
1 細胞150 メモ、葉書段落
2 短文1500企画書、会議資料、連絡文書エッセイ、節、小節
3 長文1万5千調査報告論文、章
4 15万なし

 短文は、A4版の紙1枚に収まる量です。これより長い連絡文書をもらっても、忙しい中で読み手にきちんと読んでもらえる保障はないでしょう。

 伝えたいことを整理して、絞り込んで伝えましょう。

◇ 文書構成の階層表現

 報告書など論理的な構成をおこなう文書は、章・節・項のような構成を番号付けして示します。ルールをはっきりさせていないと読者は混乱します。一般に論理構成は3層までにするのがわかりやすいです。

 一番わかりやすい階層表現は、以下の例のような番号構成です。

1.
  1.1
    1.1.1
    1.1.2
  1.2
2.
3.

 数字だけで構成せず「章」の文字を入れることもあります。また、カナやアルファベットなど異種の記号を下位の構成に入れたりすることもあります。

1章 ・・・
  1.・・・
  2.・・・
      ア.・・・
      イ.・・・

 文書の論理構成を表す数字と、リストに列挙したものにつける数字とが混乱しないようにしなければなりません。その場合に好まれる○付き数字は機種依存文字なので、列挙の場合には"1)"や"ア)"のような片カッコをつけて表現することが望ましいでしょう。
 数字の表現は、カッコなし>両カッコ>片カッコの順でレベルが下がっていくことが一般的な使い方です。
 レベル別の表現を自分なりに統一して乱さないことが大切です。通常の文書では、アラビア数字を主として、ローマ数字の使用や変わったカッコの使用などは控えた方がよいでしょう。

■ 入力編 ■

◇ 漢字をへらす

 今まで文書を書くことが苦手だった人にも、ワープロの普及で文書を作成する機会が増えました。しかし、カナ漢字変換によって難しい漢字が文面に増えてきて読みづらさを感じることがあります。漢字は一目見て多くの概念を伝えることができる有用な文字ですが、文中に漢字が多すぎるものは圧迫感があります。そのため、新聞などでは長年の実践の中で記載方法を整理してきています。私たちも、その成果に学びたいものです

 漢字で書くのは文書のキーワードとなる名詞を中心にし、そのほかの補助的な用語は漢字の使用を減らして、ひらがなにすることが基本ルールです。しかし、前後のつながりから平仮名ばかり続くと誤解されやすい場合にはあえて漢字に切り替えることも許されます。

 共同通信社の「記者ハンドブック」では、「1.代名詞、連体詞、接続詞、感動詞、助詞、助動詞・補助用言、形式名詞は、平仮名を主体とし、副詞は平仮名と漢字を書き分ける。2.接頭語、接尾語は原則として平仮名書きにする。3.漢字本来の意味がずれて使われる語は、平仮名書きがよい。4.あて字に類するものは、原則として平仮名書きとする。(以下略)」としています。

 いくつか平仮名にすべきものの実例を、「記者ハンドブック」から抜粋して紹介します。カナ漢字変換ソフトのATOKなどは、出荷時の設定でひらがな表記が第一候補となっています。漢字検定に挑戦するのでなければ、変な学習をさせない方がよいでしょう。( )内は使うべきでない漢字です。

  1. 代名詞
    われ(我)、われわれ(我々)、あなた(貴方)、だれ(誰)、これ、どこ、そこ
    漢字でよいもの:私、君、彼、彼女、自分、何
  2. 連体詞
    ある(或る)、この、その(其の)、わが(我が)
  3. 接続詞
    あるいは(或いは)、かつ(且つ)、しかし(然し)、ただし(但し)、なお(尚)、ならびに(並びに)、また(又)、または(又は)、および(及び)
  4. 感動詞
    ああ、おや。(これは漢字になるというよりカタカナで表現される)
  5. 助詞
    ぐらい、こと、ずつ、ところ、など、まで
  6. 助動詞・補助用言
    動詞・形容詞の本来の意味、用法が薄れて、上にくる文節の補助の働きをするもの。
    ようだ・ようです(様)、…という(言)、…である(有)、…でない(無)、…してあげる(上)、…していく(行)、…してくる・なってくる(来)、…にすぎない(過)、…になる(成)、…かもしれない(知)、…してみる・…とみられる(見)、…にあたって(当)、…してください(下)
  7. 形式名詞
    こと(事)、とき(時)、ところ(所)、うち(内)、もの(物・者)、わけ(訳)、ため(為)
  8. 副詞
    あらかじめ(予め)、いつか(何時か)、おおむね(概ね)、さらに(更に)、すでに(既に)、ぜひ(是非)、ちょうど(丁度)、どこか(何処か)、なぜ(何故)、なるほど(成る程)、ほとんど(殆ど)、ますます(益々)
  9. 接頭語・接尾語
    お菓子、ご結婚、○○など、○○ら、○○たち、5年ぶり

◇ 正しい区切り記号の用法

 句読点など記号の使い分けが混乱していると、文書が台無しになります。

 セミコロンとコロンを使い間違えている例をよく見ます。セミコロンはカンマとピリオドの間の強さの区切り記号で、コロンは「なぜならば」と説明を付けたり例示したりする場合に使います。形は似ていますが全く違う使い方です。

 日本語の句読点の使い方については、本田勝一氏の本が論理的で分かりやすく記述しています。

 まず、以下の資料をご覧ください。

─────────────────────────
文章の区切りを示す記号の使いかた

 ピリオド(.)−縦書きならば句点(。)は、文末に用います。ピリオドやコンマが行の頭に来ることはありません。

 コンマ(,)−縦書きならば読点(、)の打ち方は、文章の読みやすさをかなり左右します。
 (a)受けることばが、すぐ続くときはつけず、離れているときはつけます。
    ぼくは少年です。  おじさんの家へ行った。
         ぼくは、おじさんの家へ行った。

 (b)二つの文からできている文は、間につけます。
    雨が降ったので、遠足は中止になった。

 (c)コンマが多すぎてくどい場合は、(a)の「受けることばが離れているとき」のコンマは省いてもよい。
    きのう、ぼくはおじさんの家へ行った。

 セミコロン(;)は、コンマの親玉です。一つの文の中でコンマより強く区切りをつけたい時に使います。

 コロン(:)は、文中の強い区切りの符号(コンマより強く、セミコロンよりは弱い)として、それに続いて書くことが、そこまでに書いたことの詳細、あるいは要約、あるいは説明であることを示すのが役割です。一口にいえば<すなわち>です。

 なかぐろあるいはなかてん(・)は、並列、並列連結をあらわす記号です(例:図・表の使い方)。また、欧語をカナ書きする場合に語の切れ目を示すのにも使われます(例イングリッシュ・コンポジション)。

 ダッシュ(−)は、形式ばる必要がない場合に、コロンやカッコの代わりに使われます。ダッシュは、挿入節(句、語)を二つのダッシュではさんで使います。

 リーダー(・・・)は、「以下省略」をあらわす記号です。カッコの種類はいろいろありますが、ふつうに使うのは丸カッコ(パーレン)( )、角カッコあるいはブラケット[ ]、ブレース{ }、カギカッコ「 」、二重カギカッコ『 』、ギュメ< >、クォテーション・マーク“ ”、‘ ’です。丸カッコ、角カッコ、ブレースの用法については数式内のカッコの順序が、{ [ ( ) ] }のようになることを知っていれば良いでしょう。

 カギカッコは、会話の文をはさむことと、他の文章または文からの引用に用いられます。また、ある一つの考え、観念をはっきり浮き立たせて書くのに使うこともあります。 受身の文では「誰がそれをしたのか」、「誰がそう考えるのか」がぼけてしまう。 二重カギカッコは、書名を引用するときに『国語辞典』のように使います。また、カギカッコの中に、さらにカギカッコを入れたいとき、後者を二重カギカッコにします( 「■■■『■■■■■』■■■」)。

─────────────────────────
資料出典:伊津信之介,レポートを書くあなたに!良いレポートを書くために

◇ 数字表記のルール

 数字は、1桁のみのときは全角で、複数桁の場合には半角で表記するのが標準的な組み版ルールです。データとして扱われる表では、1桁でも半角として表現した方が自然です。

 3桁ごとの区切りはカンマ","、小数点はピリオド"."が日本と英語圏での標準記法です。ドイツ語などヨーロッパ圏では違うことがありますのでご注意ください。

 日付は1999/10/25のように年月日を"/"または1999.10.25と"."で区切ります。年・月・日と上位概念から順に記載するのは日本の習慣です。時刻は、22:21:07のようにコロン":"で区切ります。

◇ カタカナ表記のルール

 全角表現が標準です。表組みなどでムリしてレイアウトするときは例外ですが、半角カナを使わない方が読みやすいです。また、インターネット経由では半角カナの使用は禁忌です。日本語は全角で表記するようにしましょう。

◇ 避けたい表現

 よく間違えられている語を例示します。

よくある間違い表現

誤り 説明
データーデータもとの英語(data)では語尾を伸ばしません
シュミレーションシミュレーションsimulation
パネラーパネリストパネルディスカッションの演者

◇ 同音異義語の使い分け

 誤用されやすい同音異義語の使い分けを2つの表に分けて示します。

同音異義語の使い分け

読み 表現 説明
いぎ 異義 違った意味 同音異義
異議 意見が違う 異議申し立て
意義 物事の価値や重要性 意義のある仕事
かいてい 改定 すでに定めたり決めたりしていたものを新しいものに改める、一般用語 診療報酬改定
改訂 書籍類の内容を改め、直す 添付文書改訂
かえる・かわる 別のものがその役をする、なりかわる 肩代わり
前とは違った状態にする、姿がかわる 予定を変える
AとBを交換、転換、あらためる 配置が換わる
前の物事をやめて別の物事をする 切り替え、組み替え
きじゅん 基準 比較のよりどころとなる一定のもの 労働基準法
規準 行動や言動のしたがうべきよりどころとなる標準・規則、新聞では「基準」に統一 道徳の規準
きてい 規定 ある形に定めること、その定め 規定の書式
規程 組織内での事務などに関する規則、新聞記事では「規程」に統一 旅費規程
さくせい 作成 計画、文書などを 法案の作成
作製 物品などを パンフレットの作製
じき・じぎ 時期 とき、季節 時期尚早
時機 折、しおどき 時機を見て
時宜 程よいころあい 時宜を得た処置
せいさん 清算 きまりをつけること 過去を清算
精算 詳しい計算をすること 運賃精算所
たいせい 体制 国家・社会・組織などの恒久的、長期的な仕組み・樣式、制度化、統一化 資本主義体制
態勢 特定の物事に対応する(身)構え、一時的・部分的 スト態勢
体勢 体の勢い、姿勢 着陸体勢
ついきゅう 追及 あとから追いかける、追いつく、追い詰めて逃げられないようにすること 責任を追及
追求 あるものをどうしても得ようとする 利潤の追求
追究 分からないことをどこまでも尋ね明らかにしようとする 真理を追究
とくちょう 特徴 特に目立つ点、一般に用いる 特徴的な傾向
特長 特別な長所 本書の特長
ととのう 整理、まとめる 準備が整う
調 調達、調整、そろえる 調子を調える
はいふ 配布 広く一般に配る チラシの配布
配付 一人一人に配り渡す 答案用紙を配付する
ほしょう 保証 請け合う、損害の責めを負う 品質保証、連帯保証人
保障 保護して障害・危害などがないようにする 社会保障
補償 補い償い 損害補償
ようけん 用件 用向きの事柄 用件を済ます
要件 必要な条件 要件を満たす


■ 出力編 ■

◇ 読みやすいレイアウト

 印刷して配布するときの仕上がりに気をつかいましょう。組み版ルールからいって以下のような原則が紹介されています。ワープロ文書でも参考にしましょう。

─────────────────────────

判型と版面(はんづら)

版型・版面・マージンを決定する上での基本ルール

1. 判型は、JIS規格寸法に従い、原稿内容や原稿量などに合ったサイズを選ぶ。

2. 版面の大きさは、判型によって異なるが、1冊の本の中では、大きさを統一する。

3. 版面の大きさは、可読性と、製本様式などの造本上の条件を考えて決める。

4. 一般の書籍では、版面は紙面の50〜60%が標準である。

5. 版面の形と位地によって決定されるマージンのとり方は、天・地・ノド・小口のバランス、左右見開き2ページの視覚的バランスを考えて決める。

6. 版面と相似形で紙面の天地・左右中央に置くのが基本であるが、視覚的な中心と使いやすさ等を考えて、次の2つの原則も合わせて考慮する。

● 天/地/ノド/小口(こぐち)
本を開いて持った時、上部が「天」、下部が「地」、綴じてある側が「ノド」、開かれた端側が「小口」。

● のど・天・小口・地の割合に対する各種の説(欧文)

モリスの説1:1.2:1.44:1.73
アンウインの説1.5:2:3:4
その他1:1.5:2:3以上

● 柱 ページヘッダとかページフッタとか呼ばれているやつ。毎ページ上部に「第1章 はじめに」とかついてるアレのこと。

● ノンブル ページ番号のことです。本文より多少小さめのサイズで組むのが普通。


表 用紙サイズ一覧表(単位:mm)

A 列 B 列
A2 420×594ポスターB2515×728  
A3 297×420 B3364×515  
A4 210×297雑誌B4257×364  
A5 148×210教科書B5182×257 週刊誌
A6 105×148文庫本B6128×182  
そ の 他  
四六判(しろくはん) 127×188 B6に近いけどチョット違う
130×188   
菊判(きくはん) 152×218 A5より一回り大きい
152×227  
AB判 210×257 絵本・写真集など
ハガキ 100×148   
名刺 55×91  

───────────────────────── 資料出典:近藤信男,DTP Class A,
       平田昇治,デジタル時代の組み版術

◇ 余白を生かすレイアウト例

 私たちが一般に多く作成する文書では、A4版で作成する内部文書では一般向け書籍より版面の率が高くなります。ワープロ文書でも以下のマージン設定を標準として、まわりに余白を作って印刷すると読みやすい文書となるでしょう。

マージン設定例(mm)

  のど 小口 版面/紙面
A4 20 25 20 30 68%
18 20 22 25 69%
15 18 22 26 70%
B5 15 18 15 20 71%

 1行の文字数は12〜55字の範囲で選びます。1段の横組みのときは、1行の文字数は35〜40字を基本とします。1段の縦組みのときは、1行の文字数は40〜45字を基本とします。

 1行の長さが長いと読みにくいので、A4版縦では横組み2〜3段構成が読みやすいでしょう。

◇ 読みやすい文字組み体裁

 文字組においても以下のような定石があります。ワープロの場合には文字サイズをポイントで指定します。

─────────────────────────

級数・字詰・行間

組み体裁の基本ルール

1.書籍・雑誌の本文は、10〜14級が標準である。
2.字詰は、級数、判型に合わせて決める。
3.行間は、字詰によって異なる。
  使用文字の半角(2分、1/2em)から全角アキが標準である。
4.1行の字詰が長ければ行間を広くし、短ければ狭 くする。
5.大きな級数や字面が大きい文字は、行間を広めに し、小さい場合は狭くする。

───────────────────────── 資料出典:近藤信男,DTP Class A


◇ 文字サイズの選び方

 文書の目的別に、サイズを選びます。本文には、標準サイズとして、一般向けは10ポイントを使用し、内部文書で多くの情報を紙面に入れたいときには9ポイント、高齢者向けには11〜12ポイントで本文を作成します。

 ワープロで長く標準の大きさとされてきたのは10.5Pt(約15Q)です。

 文字(活字)の大きさを表す単位には、日本の写真植字で使われるミリベースの級数(Q)と、欧米で使われてきたインチベースのポイント(Pt)があります。1Qは、0.25mm角の文字の大きさです。1Ptは、72分の1インチ(0.3514mm)。

 以下の助言を参考にしてください。

─────────────────────────
文字サイズは必要最小限で

 別に書いた「文字サイズ換算早見表」も参考にしていただきたいのですが、むやみに(無計画に)フォントサイズを変えることを避けるために、はじめにルールを決めましょう。
ページメーカーでいう「スタイル」ってやつを考えるわけです。たとえば……

 こんな感じに決めたら、あとはむやみにサイズをいじくらないようにします。決めたラインナップ以外のものはあくまでも「イレギュラー」の扱いをしましょう。

─────────────────────────
資料出典:平田昇治,デジタル時代の組み版術

表 文字サイズ換算早見表

Pt mm 目  安
8 5.5 2.00  
9 6.5 2.25 名刺の住所欄などで使われる。Ptの場合は6Ptが望ましいが
10 7.0 2.50   
11 8.0 2.75 写真のキャプションなどに(Ptの場合)
12 8.5 3.00 写真のキャプションなどに(Qの場合)
13 9.0 3.25 主にB5くらいまでの本文で使われる
14 10.0 3.50 主にA4程度の本文で使われる
15 10.5 3.75 鉛活字時代によく本文で使われていた。本文13Qの時の小見出程度
16 11.5 4.00 本文14Qの時の小見出程度
17 12.0 4.25 本文10Ptの時の小見出程度
18 13.0 4.50 多少大きめの見出に
19 13.5 4.75  
20 14.0 5.00 中見出程度
21 15.0 5.25  
22 15.5 5.50  
23 16.5 5.75 大きめの見出(ただし、16ptとして使用)
24 17.0 6.00 大きめの見出(Q)

25Qより大きな文字は、

資料出典:平田昇治,デジタル時代の組み版術

◇ 十分な行間を

 行間が詰まった文書は、大変読みづらいものです。また、日本語は縦にも横にも読めるので、きちんとしたルールで行間と文字間をとらないと見苦しいものになります。

 内部向けの文書では、行間が70%では間延びして見えるので60%ぐらいが自然です。紙面の余裕がないときでも50%を切る文書を作るのはやめてほしいものです。

─────────────────────────
行間と字間

 フォントは、もともと全角ギリギリ一杯に作られてはいません。字間ゼロで並べても文字同士がくっつかないようにちゃんと考えてデザインされています。良かれと思って字間を広げたりすると、可読性は失われていくのが普通です。業界用語で、字間ゼロのことを「字間ベタ」というのですが、本文組については、この「字間ベタ」が基本です。
 ということは、最近流行の「詰め組(カーニング)」というやつも、本文で使うべき組み方ではありません。この問題は別の機会におきますが、まずはこの「字間ベタ」が基本であるということを知っておいて損はありません。

 そして次は「行間」ですが、こちらも一応基本があります。
 行間ベタ(ゼロ)というのは論外ですが、和文を組む場合、最低でも半角分はあけないと読みにくいとされています。
 たとえば本文が10ポイントの場合、行間5ポイントが「行間半角アキ」になります。これ以下のアキで組むのは避けたいものです。
 実際に組んでみるとわかると思いますが、実はこれでも窮屈感がある場合が多いのです。ですから、印刷業界では「2分4(にぶしぶ)アキ」という言い方があり、つまり
 2分(=2分の1、つまり半角)+4分(4分の1)
を行間にとることもよく行われています。
 10ポイントの例でいうと、「5(2分)+2.5(4分)」で「行間7.5ポイント」ということになります。0.5という端数を嫌い、行間8ポイントに丸めてしまうのが通例ですが。逆に、広ければいいってもんでもなくて、全角以上のアキを作ってしまうと、行から行への目移りに負担を与える要素となってしまいます。詩集のように「ゆったり」組むことを狙う場合は別ですが、せいぜい行間は全角アキにとどめておくのが無難です。

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資料出典:平田昇治,デジタル時代の組み版術


 日本語に独特なの組み版ルールとして罫線があります。オモテ罫・ウラ罫という用語が印刷業界では使われてきました。罫線の多用は紙面をうっとうしくしますが、上手に使うと読み間違いのない文書を作れます。標準的な罫線の太さ選びとして、ワープロ文書でも参考となります。

─────────────────────────

● オモテ罫
いわゆる「細罫」のこと。太さ0.1mm(0.3Pt)程度の“フツー”の罫線。

● ウラ罫
太さ0.4mm(1.1Pt)程度の罫線。「太罫」「G罫(ゴシックから)」などとも言われます。鉛活字の印刷(活版印刷)では、罫線ももちろん金属で作ります。この金属、包丁の歯のように片辺は細く、そのウラが太く作られていました。そこでこういう呼び方になりました。

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資料出典:平田昇治,デジタル時代の組み版術

◇ シンプルな書体で

 最近のWindowsソフトはたくさんのおまけフォント(書体)を持っています。しかし、チラシを作るときでなければ、本文は明朝体が一番読みやすいです。ゴシックは強調するとき以外は使わない方が落ち着いた文書になります。

 日本語の文書は、文字が縦方向でも整列している方が自然に見えます。大きな見出し以外にはプロポーショナルフォントを選ばない方がよいでしょう。

 組み版をおこなう方の以下のような意見を紹介します。

─────────────────────────
やたらとフォントを使わない

 今や、安いTrueTypeフォントがパッケージでドーンと手に入る時代です。「細」「中細」「中」「中太」「太」……などなど、同じ明朝でも太さ(ウェイト)のバリエーションが揃っていて、どれを使っていいものやら困ります。また、「勘亭流」やら「ポップ書体」やら、デザインフォントも様々なものがパッケージングされていて、せっかくあるものならば使いたくなるのも人情です。
 しかし!ここでグッとこらえて、「自分の中での標準フォントセット」を決めておくといいと思います。
 その際、フォント名につけられている「細」とか「太」などという名前は無視して、とりあえず、すべての書体を並べたサンプルを自分で作り、実際に使うプリンタで出力し、そこから抜き出しておくのです。
 たとえば平成明朝でいうと、

と決めたら、それ以外は特別な場合を除いて使わないようにします。

 その上、思い切って「勘亭流」などのデザインフォントは一切使わない!と決めてしまってもいいと思います。
 ポスターや広告を作るのなら別ですが、通常の印刷物の中でこのような書体をやたらに使うと、読み手の注意力が散漫になったり、可読性を損なう原因になったりすることも。章の見出など、ここぞという時に使うのならば効果が期待できますが、基本的に「使わない」とした方が、結果的には読みやすいものができると思います。
 あと、強調したいあまり、「太いゴシック」を多用される例も見受けられますが、「目立つ」を通り越して「浮いてる」場合が多いんですね。同じウェイトのゴシックに変えるだけで強調の目的はとりあえず達成できるわけですし、自分が思うより読み手にとっては強調されて映っていると思って下さい。

─────────────────────────
資料出典:平田昇治,デジタル時代の組み版術


■ 参考資料 ■

  1. 記者ハンドブック,共同通信社
  2. 平田昇治,デジタル時代の組み版術, http://www2.itjit.ne.jp/~hirata/(残念ながら、現在つながりません。2000年8月時点のアーカイブは、http://web.archive.org/web/20000823171909/http://www2.itjit.ne.jp/~hirata/)
  3. 近藤信男,DTP Class A, http://kondou.comic.to/
  4. 伊津信之介,レポートを書くあなたに!良いレポートを書くために, 2005年1月当時のアーカイブは、http://web.archive.org/web/20050209230952/www.ftokai-u.ac.jp/~solo/writing.html
  5. 本多勝一,日本語の作文技術,朝日文庫
  6. 木下是雄,理科系の作文技術,中公新書
  7. 野口悠紀雄,「超」勉強法,講談社
  8. 藤沢晃治,「分かりやすい表現」の技術,講談社ブルーバックス
  9. 津田秀樹編著,目からウロコの漢字問題,宝島社文庫

★★ 関連記事 ★★

◆ 素人のためのコンピュータ講座 藤竿伊知郎,2006年6月 − 2008年5月
  (2) ワープロが変えた事務作業
  (3) 文字入力で楽をする
  (4) 内容が先、体裁は後で
  (5) 作った文書は宝物
  (24) 著者の権利を守る文章を

◆ リスクを減らす情報技術 藤竿伊知郎,2008年6月 − 2009年3月
  (4) 情報伝達――わかってもらえる文書作り
  (5) 情報伝達――文は短いほどよい
  (6) 情報伝達――聞き取れるスピーチ

■ 改版履歴 ■

■ 付録 ■

◇ キーボードの記号の読み方

 特殊記号のうちキーボードから入力するものなどの読み方を紹介します。以下の読みは英語の発音に近いものとなっています。

キーボードの記号の読み方

記号 読み 英語
! エクスクラメーション exclamation
" ダブルクォーテーション double quotation
# ナンバー number
$ ダラー dollar
% パーセント percent
& アンパサンド ampersand
' アポストロフィー apostrophe
( レフトパレンタシス left parenthesis
) ライトパレンタシス right parenthesis
* アスタリスク asterisk
+ プラス plus
, カンマ comma
- マイナス minus
. ピリオド period
/ スラッシュ slash
: コロン colon
; セミコロン semicolon
< レス less
= イーコル equal
> グレイター greater
? クエッション question
@ アット at
[ レフトブラケット left bracket
] ライトブラケット right bracket
^ サーカムフレックス circumflex
_ アンダースコア underscore
` グレイブ grave
{ レフトブレイス left brace
| バー bar
} ライトブレイス right brace
~ ティルダ tilde
Caps キャップス、カップス caps(capital letters)
Alt オルト、アルト alt.(alternate)
BS バックスペース back space
Num ナム num.(numerals)

Author = "Tetsuyasu"<lucifer@u-net.or.jp> の資料をもとに作成

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